「辰巳 竜太。こいつのオヤジだよ」



ソファーに寝そべる辰巳君を指して、長谷川君はニコッと笑った。


辰巳君はスマホをイジるのに夢中で、こっちには興味がなさそう。


っていうか、人の話聞いてない。



「え?あ……竜太って辰巳君のことだったんだ」



そういえば、前にみっちがリュウっちとか言ってたような……。


リュウっち=竜太=辰巳君だったわけね。


全然結び付かなかった。


そうだったんだ。


覚えておこう。



リュウね。



「ここに住んでるの?」



生活感はないけど寝るだけなら出来そうだし、そうであってもおかしくはない。



「住んでねーよ。1人になりたい時に来るくらい」



答えたのはさっきまでスマホをイジっていた辰巳君。


聞いてないフリして、ちゃっかり聞いてたんだ?


1人になりたい時……か。


「如月さんにもあるだろ?そういう時」


「まぁ、ね……」


みんな同じなんだ。


そう思ったらなぜだかホッとした。


長谷川君の冷たい笑顔の裏側には、なにが隠されているんだろう。


辰巳君は底知れないほどの深い闇に呑み込まれているような、とても大きな何かを背負っているような……そんな目をしている。


だけど怖いと思わなかったのは、その中にあるさびしさとか孤独に気付いてしまったから。