そこから直接外に繋がっているわけではなく、扉の向こうに廊下があってそこから外に出られるみたい。
クラブの裏にこんなところがあるなんて知らなかった。
「ここ、竜太(りゅうた)のオヤジのビルなんだよ。なんでも揃ってるし、家より居心地いいよ」
長谷川君は大きな目を細めて笑った。
色のない、何となく冷たい瞳を見てヒヤッとさせられる。
やっぱり……長谷川君も何かを秘めている。
そう思わせるような瞳だった。
それにしても、へぇ。
オヤジが経営してるビル、ね。
そうなんだ。
すごいな。
それくらいにしか思わなかった。
それよりも。
「ねぇ、竜太って誰?」
そっちの方が気になって思わず聞いてしまった。
「え?マジで言ってる?」
「うん」
目を見開く長谷川君に真顔で返す。
だって、下の名前を言われてもわからないよ。
「まさか、竜太を知らない奴がいたとは」
「だって、興味ないもん」
知りたいとも思わないし。