「なんかもう無理な気がする…絶対無理」
確証あり。だってお昼はこうして屋上で、ひとり飯だから。
辛いを通り越して虚しいよね、うん。
「あー!!!もう疲れたあーー!!!!」
誰もいない屋上。こうして叫んだりできる場所が学校の中にあるだけで少し楽な気がする。
「るっせーなあ…誰だよクソ」

!?

「だっ、だれ!!?」
上から謎の声が聞こえた。
聞くからに低音。いわゆる男声だ。
「俺に聞く前にまず自分から名乗んのが礼儀ってやつだろ」
『そいつ』は屋上からハシゴで上がったところにいた。
「見ず知らずのアンタに名乗る訳ないでしょアホ面!」
「あぁ?お前殺されてーのかよガキ」
「はあ!?屋上でガチ寝してるアンタの方が、よっぽどガキよ!」
「んだと、ちんちくりん…ガキみてーにちっせーのは身長だけじゃなくて器もかよ」
「〜…っ」
ほんっとに腹が立つやつだ。
「とにかく!場所変えなさいよ!アンタがいたら食べれないじゃない!」
私より若干上にいる『そいつ』に指さしてやった。
「こんなとこでぼっち飯かよ…」
「あ、あんたに関係ないでしょー!」
「っせーな…お前が場所変えろ。わりぃけどここはテリトリーなわけ。お前と違って俺は朝からしっかりここで場所とってんだよ」
は?朝から…?
「授業は?」
冷静になって訊いた。
「んなの出るわけねーだろ、つまんねーし。学校に来るだけえれーんだよ、俺」
完全に授業出ない自分カッコイイっすよねって雰囲気だしてるナリヤンとやらだ。

でも…

「…友達、いないの?」
“ 独り”だってことは私と同じだ。
「いねーんじゃねえよ。つくんねーだけ」
出た。友達が出来ないタイプの人の言い訳。
「…そ」
まあ、その『言い訳』は私も使い済みだけど。
「お前…名前は?」
「は?」
え、何コイツ。
先ほど君は「俺に聞く前にまず自分から名乗んのが礼儀ってやつだろ」とか言ってましたよね。礼儀とは。
「…し、四ノ宮よ」
「名前」
「四ノ宮!」
アンタなんかに教えてやるもんかと思った。
「はいはい、礼儀な。俺、如月冬也(きさらぎ とうや)」
如月…冬也?なんか聞いたことあったようななかったような。
「で?」
お前は?と聞きそうな顔をしている。
その時、昼休みの終わりの鐘が鳴った。
「あ…」
ナイスタイミング!
「じゃ、じゃあ私行くから!アンタも授業出なさいよ!」
あまり食べれなかったお弁当を仕舞い、急いで屋上の出口のドアノブを握った。

『はいはい、礼儀な』

(自分が礼儀だって言ったから…ちゃんと、教えてくれたんだよね…)
「っ!」
ぐるんと振り返り、
「四ノ宮 梓(しのみや あずさ)!」
と言った。恥ずかしさ、というかなんか満足感あった。