彼は藤娘

体育Bの発表まであと一週間と2日。
さすがにどこのチームもお尻に火がついているらしく、珍しく燈子ちゃんのクラブ活動も遅刻黙認になった。
校舎内にはいろいろな音楽が流れ、賑やかこの上ない。
私たちのチームは今日も生徒会室を使わせてもらっていた。

燈子ちゃんが考えた振付は、ビシッと揃えるところとソロパートとが混じっている。
それぞれの得意を尊重して作ってくれた「見せ場」だ。
遥香にはポップに飛び跳ねる系の元気な動き、奈津菜にはパントマイム混じりのシャープな踊り、私には旋律を追うようなバレエと日舞の中間のような緩やかな舞、そして燈子ちゃんは地を這うようなモダンダンスの真髄(笑)らしい。
「せっかくやしもっと綺麗なんを踊ったらいいのに。グロテスクやわ。」
奈津菜にそう言われても、燈子ちゃんは胸を張る。
「これがいいねん。ニジンスキーとマーサ・グラハムの『春の祭典』をモチーフになんて、コンクールでは使えへんもん。」
ダンスの振り付けにも著作権みたいなのがあるのか?
単に、有名な振り付けをパクっても入賞できないからかもしれないけど。

13時半前に、会長が5人ほど引き連れて生徒会室に入ってきた。
「あらま、ここもダメか。」
ガッカリしてる会長に慌てて言った。
「いえいえ!もう終わりますんで、どうぞ使ってください!」
私たちはバタバタと撤退した。

「あ、ちょっと!あきちゃん?」
会長が廊下にまで私を追いかけてした。
「はい?来週の会議ですか?」
そう聞くと、会長は言いにくそうに目を泳がせながら口を開いた。

「……彼とは、もう、別れたん?」
「ヘ?」
驚いて会長を見る。

「彼って、彩乃くん?いえ?今日も明日も会いますよ?」

すると会長は、ほっとしたように息をついた。
「あ、よかった。あっちの学校で、別れたって噂になってたらしいから。ちゃんと訂正してもらっときや。」

え……なんで?
ほぼ毎日会ってるのに。

「じゃ、月曜に。」
会長は生徒会室へと戻った。

燈子ちゃんはお弁当を携えて部室へ。
私たちはカフェで遅いランチをとった。
「さっきの話、人前で喧嘩でもした?」
奈津菜に聞かれて、私は首をかしげた。

遥香がニヤニヤとフォークを振り回す。
「浮気ちゃう~?義人の友達やろ?悪い遊び覚えたんちゃう~?」

……いやいやいや。
先週、舞台を終えたばかりなのに、そんな暇はなかったはず。

「でも、ちょっと心配。今までは全く考えへんかったけど、髪切ってから、彩乃くんが普通にかっこいいし。」
私の言葉に2人が反応する。