放課後。
燈子ちゃんがクラブ活動に行くのを見送ってから、私は珍しく遙香と奈津菜と一緒に帰路に就いた。
「そういえば、来年、京大出たての男性教諭が来るらしいで。職員室で聞いた。」
遙香が、跳ねるように歩きながらそう言った。
「へえ?女子校によぉそんな危ない人選したねえ。」
私がそう言うと、遙香が変な笑い方をした。
「それがね、イケメンとはほど遠いらしい。数学オタクやって。数学のクラブ作って、数学オリンピックを目指すらしいで。」
「へえ。うち、中学も高校も数学の入試問題難解で、結果的に数学苦手な生徒が多いから、いいことやと思うわ。」
と、他人事(ひとごと)な感想を述べるに留める。
……まさか、まだ見ぬ彼にそれ以上関与することになるとは思わなかった……この時は。
途中で彼女らと別れて、バスに乗車する。
お家元に到着したのは、16時半。
さすがに発表会の翌日なので、お稽古はお休みらしく、誰もいらっしゃらないようだ。
何となくホッとして、私は奥へと進んだ。
彩乃くんのお部屋に入ると、彩乃くんのお荷物と一緒に極楽鳥(ストレチア)の花の包みもそっと置かれていた。
これこれ。
包みをといて、しばし考える。
お花だけで葉っぱがない状態なので、どうしようかな。
少し悩んで、寸胴の花器に剣山を入れさせてもらうことにした。
準備を整えて、鋏(はさみ)を入れる。
5本しかないから、私の理想とする7本よりは淋しいけれど、お生花(せいか)風に活けてみた。
……もうちょっと高低差つけたほうがいいかな。
思い切って鋏を入れては、あんばいを見る。
「……あなたも、その花が好きなのですか?」
急に背後から声をかけられた。
驚いて振り返ると、いつの間にかすぐ後ろにお家元が座ってらした。
き、気づかんかった!
「こんにちは、お邪魔しています。」
慌てて、両手をついてそうご挨拶をした。
「はい、こんにちは。今日は?副家元はまだ来はりませんか?」
……お家元は彩乃くんのことをこれから「副家元」と呼ぶのか。
孫なのに、ちょっと悲しい。
「すみません、約束したわけではありませんので、わかりません。たぶん来られると思うのですが。」
一応、彩乃くんに対しても敬語を使ってみた。
お家元が敬語を使った以上、私が馴れ馴れしく呼ぶべきではないのかもしれない。
「そうですか。このお花はあなたが持ってこられたのですか?」
「いえ!昨日、友人が送った花の一部なんです。みなさんがお帰りになられたあと、お花スタンドに残ってましたのでいただきました。」
私がそう言うと、お家元は柔らかく微笑まれた。
その笑顔は、やはり彩乃くんに少し似ている気がした。
燈子ちゃんがクラブ活動に行くのを見送ってから、私は珍しく遙香と奈津菜と一緒に帰路に就いた。
「そういえば、来年、京大出たての男性教諭が来るらしいで。職員室で聞いた。」
遙香が、跳ねるように歩きながらそう言った。
「へえ?女子校によぉそんな危ない人選したねえ。」
私がそう言うと、遙香が変な笑い方をした。
「それがね、イケメンとはほど遠いらしい。数学オタクやって。数学のクラブ作って、数学オリンピックを目指すらしいで。」
「へえ。うち、中学も高校も数学の入試問題難解で、結果的に数学苦手な生徒が多いから、いいことやと思うわ。」
と、他人事(ひとごと)な感想を述べるに留める。
……まさか、まだ見ぬ彼にそれ以上関与することになるとは思わなかった……この時は。
途中で彼女らと別れて、バスに乗車する。
お家元に到着したのは、16時半。
さすがに発表会の翌日なので、お稽古はお休みらしく、誰もいらっしゃらないようだ。
何となくホッとして、私は奥へと進んだ。
彩乃くんのお部屋に入ると、彩乃くんのお荷物と一緒に極楽鳥(ストレチア)の花の包みもそっと置かれていた。
これこれ。
包みをといて、しばし考える。
お花だけで葉っぱがない状態なので、どうしようかな。
少し悩んで、寸胴の花器に剣山を入れさせてもらうことにした。
準備を整えて、鋏(はさみ)を入れる。
5本しかないから、私の理想とする7本よりは淋しいけれど、お生花(せいか)風に活けてみた。
……もうちょっと高低差つけたほうがいいかな。
思い切って鋏を入れては、あんばいを見る。
「……あなたも、その花が好きなのですか?」
急に背後から声をかけられた。
驚いて振り返ると、いつの間にかすぐ後ろにお家元が座ってらした。
き、気づかんかった!
「こんにちは、お邪魔しています。」
慌てて、両手をついてそうご挨拶をした。
「はい、こんにちは。今日は?副家元はまだ来はりませんか?」
……お家元は彩乃くんのことをこれから「副家元」と呼ぶのか。
孫なのに、ちょっと悲しい。
「すみません、約束したわけではありませんので、わかりません。たぶん来られると思うのですが。」
一応、彩乃くんに対しても敬語を使ってみた。
お家元が敬語を使った以上、私が馴れ馴れしく呼ぶべきではないのかもしれない。
「そうですか。このお花はあなたが持ってこられたのですか?」
「いえ!昨日、友人が送った花の一部なんです。みなさんがお帰りになられたあと、お花スタンドに残ってましたのでいただきました。」
私がそう言うと、お家元は柔らかく微笑まれた。
その笑顔は、やはり彩乃くんに少し似ている気がした。



