美容師さんが片付け始める。
彩乃くんもさっさと立ち上がり、着替えのお着物を準備し始めた。
私は、逃げるように楽屋から出た。
廊下に出て、天を仰いでため息をついた。
どうしよう……。
彩乃くん、かっこいい。
普通に、かっこいい。
……これから、絶対もてはるわ。
私も含めて、今までのようなマニアックな趣味の女子だけじゃなくて。
あああああ。
てか!
自分がわからない。
たぶん、髪が長い彩乃くんだから、私は気になってしょうがなくて好きになったんだと思う。
もちろん今は、髪の長さに関係なく、彩乃くんが好き。
……そう思ってた。
でも……違う。
今までとは違う。
ドキドキが止まらない。
うまく言えないけど、もっと、こう、生々しく感じて、意識してしまっている。
男なんだ、って。
怖いような、恥ずかしいような……。
しばらく悶々としてたけれど、美容師さんが帰って行くのを竹原くんが見送りに出てきた。
「彩乃、もう着替えたで。……別人。」
竹原くんの言葉に、ドキドキがさらに強まった。
私はうなずいて、そっと楽屋を覗く。
……だめだ。
恥ずかしくて直視できない。
私は、もう一度廊下に出ようとして、彩乃くんに呼ばれた。
「あき。どや?」
どやって言われても……
振り返って、彩乃くんを見る。
……匂い立つような色香を感じる……男の。
彩乃くんは、羽二重の紋付き羽織袴をビシッと着ていた。
こないだの試験の時だって同じ格好だったのに、髪を切っただけでこんなに違うなんて。
「……別人。」
やっとそう言って、私はホロリと一粒、涙をこぼした。
「あき?何も、泣かんでも……」
彩乃くんが困った顔でそう言いながら近づいてくる。
肩に手を置かれて、ビクッとしてしまう。
顔を覗き込まれて、私はたぶん真っ赤になっているであろう自分が恥ずかしくて、体をよじって逃れようとした。
「逃がさへんで。もう白粉(おしろい)ついてへんから。」
彩乃くんがそう言って、右手でそのまま私の右肩をつかみ、左手で私の腕をつかんだ。
捕獲された。
「ほな行こか。セルジュ、いい。荷物は係のお弟子さんが回収してくれるから。」
「お花-!」
「あほ。明日、家元に取りに来い。」
……まあ、確かにそのほうがいいか……どうせ、彩乃くんのお部屋の床の間に活けようと思ってたし。
「タクシー来たで。」
竹原くんがタイミングよくそう呼びに来た。
後片付けのお弟子さん達が、彩乃くんの髪に気づいて驚きの声を挙げる中、彩乃くんは
「よろしくお願いします。行ってきます。」
と、1人1人に挨拶しながら通り過ぎた。
……どうでもいいけど、放してほしい……恥ずかしいから。
彩乃くんもさっさと立ち上がり、着替えのお着物を準備し始めた。
私は、逃げるように楽屋から出た。
廊下に出て、天を仰いでため息をついた。
どうしよう……。
彩乃くん、かっこいい。
普通に、かっこいい。
……これから、絶対もてはるわ。
私も含めて、今までのようなマニアックな趣味の女子だけじゃなくて。
あああああ。
てか!
自分がわからない。
たぶん、髪が長い彩乃くんだから、私は気になってしょうがなくて好きになったんだと思う。
もちろん今は、髪の長さに関係なく、彩乃くんが好き。
……そう思ってた。
でも……違う。
今までとは違う。
ドキドキが止まらない。
うまく言えないけど、もっと、こう、生々しく感じて、意識してしまっている。
男なんだ、って。
怖いような、恥ずかしいような……。
しばらく悶々としてたけれど、美容師さんが帰って行くのを竹原くんが見送りに出てきた。
「彩乃、もう着替えたで。……別人。」
竹原くんの言葉に、ドキドキがさらに強まった。
私はうなずいて、そっと楽屋を覗く。
……だめだ。
恥ずかしくて直視できない。
私は、もう一度廊下に出ようとして、彩乃くんに呼ばれた。
「あき。どや?」
どやって言われても……
振り返って、彩乃くんを見る。
……匂い立つような色香を感じる……男の。
彩乃くんは、羽二重の紋付き羽織袴をビシッと着ていた。
こないだの試験の時だって同じ格好だったのに、髪を切っただけでこんなに違うなんて。
「……別人。」
やっとそう言って、私はホロリと一粒、涙をこぼした。
「あき?何も、泣かんでも……」
彩乃くんが困った顔でそう言いながら近づいてくる。
肩に手を置かれて、ビクッとしてしまう。
顔を覗き込まれて、私はたぶん真っ赤になっているであろう自分が恥ずかしくて、体をよじって逃れようとした。
「逃がさへんで。もう白粉(おしろい)ついてへんから。」
彩乃くんがそう言って、右手でそのまま私の右肩をつかみ、左手で私の腕をつかんだ。
捕獲された。
「ほな行こか。セルジュ、いい。荷物は係のお弟子さんが回収してくれるから。」
「お花-!」
「あほ。明日、家元に取りに来い。」
……まあ、確かにそのほうがいいか……どうせ、彩乃くんのお部屋の床の間に活けようと思ってたし。
「タクシー来たで。」
竹原くんがタイミングよくそう呼びに来た。
後片付けのお弟子さん達が、彩乃くんの髪に気づいて驚きの声を挙げる中、彩乃くんは
「よろしくお願いします。行ってきます。」
と、1人1人に挨拶しながら通り過ぎた。
……どうでもいいけど、放してほしい……恥ずかしいから。



