彼は藤娘

「あきちゃん。こんなこと言いたくないけど、あきちゃんが校則違反しているって投書が何通も来てます。」
……あ~。

副会長が苦笑いする。
「あれやね、『異性との交遊は慎しむこと』。気にするな。どうせまだ、付き合ってへんやろ?」
私は何も言えなくなってしまった。

「あらら。付き合ってるの?あら~、それはそれは。おめでとう!よかったねえ。」
会長がキャッキャとはしゃいで祝福してくれた。
……今、注意した人と同一人物とは思えない。

「ま、いろんなこと言うひとがいるから、気を強く持ってがんばりなさいね。」
コイバナ大好きな会長がそう〆(しめ)てくれたけど、私は思いきって言ってみた。

「……すみません。たぶんこれからまたお騒がせしてしまうと思います。おつきあいしてるのかどうか自信ないんですけど、今朝、許婚(いいなずけ)だと宣言されました。」

……生徒会室に沈黙が広がる。

「まあ、それは、逆にいいんじゃないですか?不純異性交遊には適応しないでしょう。」
おもむろに議長がそう言った。

「しかも考えようによっては好都合。来年の生徒会役員はフルメンバー揃えられるんじゃない?」
副会長もうなずいて、そう付け足した。

今年、先輩方が必死で勧誘しまくったにも関わらず、会計が欠員してしまった高校生徒会。
文化祭・体育祭の終わった今、本当に一番の議題は来年の生徒会役員の確保かもしれない。

「あきがあの子らのうちの1人と完全にできてしまえば、残りの2人とお近づきになりたい、ケツの軽い生徒が食いついて来ぉへんかな?」
副会長の言葉遣いを会長が窘める。
「ケツはダメだって。……まあでも、食いつくように私たちが煽ればいいのよね。ふふ。」

いやいやいや。

「それじゃ私は来年も生徒会役員なんですか?しかも、そんな目的で来る子達と一緒に仕事できるわけないじゃないですか!」
私がそう訴えても、会長は笑顔で無視して言った。

「そういえば、あっちの学校では、美丈夫の竹原くんを来年の生徒会長にしようと現生徒会が説得を続けてるみたいよ。役員同士の交流もあるって噂流そうか?」

……ないですから、そんなもん。
責任とれないこと、せんといてくださいよー。


夜、珍しく彩乃くんからラインが来てた。
明日の放課後、逢えるかどうかの問合せ。
……うれしいけど……お茶のお稽古がある。
そう送信すると、すぐに電話がかかってきた。

『じゃ、明後日。約束な。』
「うん。お家にうかがえばいいの?あ、でも明後日の朝は仏参やし早く行くね。」
『えー。あき、いいひんかったら、俺またあいつらにいじめられるわ。』

……やっぱりからかわれてたんや。
「おかげさまで、私も学校で投書までされたわ。」

『なんで?』
「校則違反やって。『異性との交遊は慎しむこと』。」

彩乃くんは、吹き出して笑ってた。
……笑い事じゃないねんけどね。

『あきのご両親だけじゃなくて、学校にも挨拶行ったほうがいい?』

いや、もう、本気でやめてね。