なかったけど……
「おいにけらしな。」
「へ?呪文?」
「私もわからへん。とりあえずメアド交わした。一歩前進?」
そう言うと、燈子ちゃんは拍手してくれた。
「えー!すごいすごい!ノリで交わすんじゃなくて、わざわざ聞きに来はってんろ?それってめっちゃ意味あるやん。」
やっぱりそう!?
仏参中も、授業が始まっても、私はへらへら笑っていた。
「そういう顔しといて」って言われたも~ん。
……それにしても「おいにけらしな」の意味は?
ネットで検索すると、お能「井筒」の一節らしい。
てか!
ちょうど今回のテスト範囲に「伊勢物語」の「筒井筒」が入っていて、品詞分解まとめたからけっこう覚えてるんだけど、タイトルロールとも言えるあの有名な和歌が微妙に違うことを知った。
伊勢物語では、「筒井つの井筒にかけしまろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに」
能「井筒」は、「筒井筒 井筒にかけしまろがたけ 生いにけらしな 妹見ざるまに」
ピンポイントに違う部分だけを言わはったからわからなかった。
これって、つまり、幼なじみが久しぶりに会った時に背が伸びて成長してた、のよね?
私、彩乃くんと、以前に逢ってた?
……思い出せない。
テスト直前の土曜日。
授業が終わると、私はそのままお華のお家元を訪ねた。
既に私の注文した花材と共に、自宅から花器や用具も、師が車で運んでくれていた。
早速、与えられたスペースでお花と格闘を始める。
慣れた人達は一旦お花を形にしてきてから会場で活け直すだけにしてきてるのだが、私にはその時間もなかったのだ。
制服だったので目立つのだろう、お家元や高位の先生がたにも話しかけられて、アドバイスまでもらってしまった。
得した気分。
何とか思い通りに活(い)けることができ、周囲を片付けていると、師の師に声をかけられた。
「明子ちゃんでしたね?大きくなって。あら~、立派に活(い)かってる。もういつでも師範になれるわね。」
「こんにちは、ご無沙汰しております。この度は出展のお力添えをありがとうございました。」
慌てて膝をつき、手をついて頭を下げてご挨拶をした。
「あら、こんなところで……」
と言いつつ、師の師も座って、挨拶を返してくれてから、にっこり笑った。
「お若いのに、しっかりしてはって。これなら安心してお願いできるわねえ。来週の土日、かまへん?姉の舞踊のお茶出し頼んでも。名取試験で全国から幹部も勢揃いしはるんよ。」
「はい!あの、うちの学校、土曜も授業があるんで、昼からになりますけど、楽しみにしてます!……あのぉ、あやの……さんも、いらっしゃいますか?お家元のお孫さんの。」
私がそう聞くと、師の師は表情を輝かせた。
「おいにけらしな。」
「へ?呪文?」
「私もわからへん。とりあえずメアド交わした。一歩前進?」
そう言うと、燈子ちゃんは拍手してくれた。
「えー!すごいすごい!ノリで交わすんじゃなくて、わざわざ聞きに来はってんろ?それってめっちゃ意味あるやん。」
やっぱりそう!?
仏参中も、授業が始まっても、私はへらへら笑っていた。
「そういう顔しといて」って言われたも~ん。
……それにしても「おいにけらしな」の意味は?
ネットで検索すると、お能「井筒」の一節らしい。
てか!
ちょうど今回のテスト範囲に「伊勢物語」の「筒井筒」が入っていて、品詞分解まとめたからけっこう覚えてるんだけど、タイトルロールとも言えるあの有名な和歌が微妙に違うことを知った。
伊勢物語では、「筒井つの井筒にかけしまろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに」
能「井筒」は、「筒井筒 井筒にかけしまろがたけ 生いにけらしな 妹見ざるまに」
ピンポイントに違う部分だけを言わはったからわからなかった。
これって、つまり、幼なじみが久しぶりに会った時に背が伸びて成長してた、のよね?
私、彩乃くんと、以前に逢ってた?
……思い出せない。
テスト直前の土曜日。
授業が終わると、私はそのままお華のお家元を訪ねた。
既に私の注文した花材と共に、自宅から花器や用具も、師が車で運んでくれていた。
早速、与えられたスペースでお花と格闘を始める。
慣れた人達は一旦お花を形にしてきてから会場で活け直すだけにしてきてるのだが、私にはその時間もなかったのだ。
制服だったので目立つのだろう、お家元や高位の先生がたにも話しかけられて、アドバイスまでもらってしまった。
得した気分。
何とか思い通りに活(い)けることができ、周囲を片付けていると、師の師に声をかけられた。
「明子ちゃんでしたね?大きくなって。あら~、立派に活(い)かってる。もういつでも師範になれるわね。」
「こんにちは、ご無沙汰しております。この度は出展のお力添えをありがとうございました。」
慌てて膝をつき、手をついて頭を下げてご挨拶をした。
「あら、こんなところで……」
と言いつつ、師の師も座って、挨拶を返してくれてから、にっこり笑った。
「お若いのに、しっかりしてはって。これなら安心してお願いできるわねえ。来週の土日、かまへん?姉の舞踊のお茶出し頼んでも。名取試験で全国から幹部も勢揃いしはるんよ。」
「はい!あの、うちの学校、土曜も授業があるんで、昼からになりますけど、楽しみにしてます!……あのぉ、あやの……さんも、いらっしゃいますか?お家元のお孫さんの。」
私がそう聞くと、師の師は表情を輝かせた。



