秋。
テオさんの振付する新しいミュージカルが始まった……らしい。
もちろん日本では何のニュースにもならない。
が、全米でメイキング番組が放映されると、彩乃くんの、いや、芳澤綾之助の美貌が一気に注目されてしまった。
芳澤流のホームページにアメリカからの書き込みが溢れる。
問合せとオファーひとつひとつに返信するのはけっこう大変だった。
秋の発表会には、わざわざアメリカから人が押し寄せた。
……おかげでチケットは完売。
補助席と立ち見を入れてもお客さんが入りきらず、伝説の座布団席まで販売させていただいた。
超大入りだった……。
アメリカで火のついた芳澤綾之助ブームが日本に飛び火すると、私たちは慌てて消火活動をした。
お家元のおっしゃった通り、礼儀知らずなマスコミ対応には骨が折れたが、最終的にはこれも義人くんの紹介してくれた弁護士さんに鎮めてもらった。
それでも、まことしやかに広まる評判が評判を呼び、芳澤流を新規で習う人がどーんと増えた。
一過性のこととは思うけれど、その中で一握りでも熱心な人が残ればいい。
そんな気持ちで、私たちは入門希望者を受け入れ続けた。
3回生になると、彩乃くんは課題で忙しくなった。
可能な限り、せっかく増えたお弟子さんを教えたいとは思っているようだったが、課題の提出期限前はやはり時間が足りず、大学に寝袋を持ち込んで泊まるらしい。
仕方なく、時間に余裕のありそうな幹部の先生がたにお願いして、彩乃くんの忙しい時期は交替で教えていただくことにした。
……彩乃くんは愛されているから文句を言われることはない……が、その分のとばっちりは全て私にぶつけられた。
今まで以上に風当たりが強くなり、あからさまな文句、嫌味、愚痴を聞かされる。
さすがにお家元が気をつけてくださっていたけれど。
そして5月3日。
恒例の舞踊会が歌舞練場で行われる、その朝。
早朝からお家元と歌舞練場を2往復して、お家元と彩乃くんにゲネプロ(場当たり)を任せて、雑務に走りまわる。
……この感じ……生徒会役員時代の文化祭みたい……私、こういう役回りなのかな。
ただ、あの頃と違うのは、各処で年嵩の先生がたへの気遣いがハンパなく必要なこと。
さすがにここまで滅私奉公していれば、以前よりは表面的には穏やかに接してくださるかたが増えてる。
が、彩乃くんに特別な思い入れをお持ちな先生がたからは、やはり私は虫のように嫌われ続けている。
今日も、朝からかけずり回って調整して、落ち度なく順調に運んでいることにホッとしてやっと着物に着替えていたら
「ナンボできたお人やからて、あれでは副家元とは釣り合いません。もっと慎ましいお嬢さんやないと、芳澤流の品が落ちます。」
と隣の部屋で、あからさまに悪口を言われていた。
テオさんの振付する新しいミュージカルが始まった……らしい。
もちろん日本では何のニュースにもならない。
が、全米でメイキング番組が放映されると、彩乃くんの、いや、芳澤綾之助の美貌が一気に注目されてしまった。
芳澤流のホームページにアメリカからの書き込みが溢れる。
問合せとオファーひとつひとつに返信するのはけっこう大変だった。
秋の発表会には、わざわざアメリカから人が押し寄せた。
……おかげでチケットは完売。
補助席と立ち見を入れてもお客さんが入りきらず、伝説の座布団席まで販売させていただいた。
超大入りだった……。
アメリカで火のついた芳澤綾之助ブームが日本に飛び火すると、私たちは慌てて消火活動をした。
お家元のおっしゃった通り、礼儀知らずなマスコミ対応には骨が折れたが、最終的にはこれも義人くんの紹介してくれた弁護士さんに鎮めてもらった。
それでも、まことしやかに広まる評判が評判を呼び、芳澤流を新規で習う人がどーんと増えた。
一過性のこととは思うけれど、その中で一握りでも熱心な人が残ればいい。
そんな気持ちで、私たちは入門希望者を受け入れ続けた。
3回生になると、彩乃くんは課題で忙しくなった。
可能な限り、せっかく増えたお弟子さんを教えたいとは思っているようだったが、課題の提出期限前はやはり時間が足りず、大学に寝袋を持ち込んで泊まるらしい。
仕方なく、時間に余裕のありそうな幹部の先生がたにお願いして、彩乃くんの忙しい時期は交替で教えていただくことにした。
……彩乃くんは愛されているから文句を言われることはない……が、その分のとばっちりは全て私にぶつけられた。
今まで以上に風当たりが強くなり、あからさまな文句、嫌味、愚痴を聞かされる。
さすがにお家元が気をつけてくださっていたけれど。
そして5月3日。
恒例の舞踊会が歌舞練場で行われる、その朝。
早朝からお家元と歌舞練場を2往復して、お家元と彩乃くんにゲネプロ(場当たり)を任せて、雑務に走りまわる。
……この感じ……生徒会役員時代の文化祭みたい……私、こういう役回りなのかな。
ただ、あの頃と違うのは、各処で年嵩の先生がたへの気遣いがハンパなく必要なこと。
さすがにここまで滅私奉公していれば、以前よりは表面的には穏やかに接してくださるかたが増えてる。
が、彩乃くんに特別な思い入れをお持ちな先生がたからは、やはり私は虫のように嫌われ続けている。
今日も、朝からかけずり回って調整して、落ち度なく順調に運んでいることにホッとしてやっと着物に着替えていたら
「ナンボできたお人やからて、あれでは副家元とは釣り合いません。もっと慎ましいお嬢さんやないと、芳澤流の品が落ちます。」
と隣の部屋で、あからさまに悪口を言われていた。



