テオさんは、昨秋始まった話題のミュージカルで振付師デビューを果たした。
その後も順調にミュージカルを中心に振付をしているらしい。
本人的には、いずれはダンサーの育成に従事したいが、懇意の演出家に舞台演出の道に引っ張られそうな状況だそうだ。
……遠い世界の話でピンと来ないが。
な~んて思ってたら、5月1日、燈子ちゃんが大興奮してラインに書き込んだ。
<テオさんが、トニー賞にノミネーションされた!>
……遠い世界だけど、それがものすごいことだということは、よくわかった。
アルバイトが忙しくなる秋のお彼岸前に、燈子ちゃんは帰国した。
遠い世界のはずだったテオさんから、内々のお伺いを持って。
「へえ?テオさんが?偉い出世しはってんねえ~。で?うちに来はるん?何で?」
残暑の厳しさにお扇子をパタパタさせながら、お家元が首をかしげた。
「テレビ番組の取材だそうです。次にテオさんが振付する舞台が注目されてるらしくて、そのメイキングを撮ってて。テオさん、ダンサーとしてダメになったどん底の時に見た日本舞踊が自分の振付師としての原動力になっている、って発言してるらしいです。ね?」
「はい。すみません、何だかややこしいことで。たぶんビジュアルが華やかだから少し使いたいだけだと思うんですけど……。」
私の隣で燈子ちゃんが申し訳なさそうに、そう言った。
「へえ~……。」
お家元はどうとでも取れる空返事をして、お茶を一口飲んだ。
「あれちゃいますん?単にスタッフが京都に遊びに来る理由が欲しいんちゃいますか?……昔からテレビやら雑誌やら新聞やら失礼な人が多いから、私は遠慮させてもろていい?この件は副家元に一任しますから。好きにやってください。ああ!ただし、撮影前に企画内容とギャラを明確にすることと、出来上がった番組を流す前に内容確認することをちゃんと契約せんとあかんで。」
お家元の返事につい、ぽか~んとしてしまった。
「……よくあることなんですか?」
「よく、ではないけど、そりゃ、あります。彩乃さん個人にかて、ちっちゃい頃からなんべんもあります。取材もドラマ出演も舞台出演も。もちろん全部断ってきましたけど。」
え!?
「うちはマスコミに有名にしてもらう必要はないんです。宣伝なんか必要ありません。それ以上に怖いんは品格を落とすことです。それさえ肝に銘じてくれてたらええわ。」
お家元の言葉の重みをズシンと感じつつ、私はうなずいた。
彩乃くんは、あっさりOK。
……お家元と違って、あまりにも何も考えてなさそうなので、逆に心配になった。
やっぱりこの人、極楽とんぼだわ。
その後も順調にミュージカルを中心に振付をしているらしい。
本人的には、いずれはダンサーの育成に従事したいが、懇意の演出家に舞台演出の道に引っ張られそうな状況だそうだ。
……遠い世界の話でピンと来ないが。
な~んて思ってたら、5月1日、燈子ちゃんが大興奮してラインに書き込んだ。
<テオさんが、トニー賞にノミネーションされた!>
……遠い世界だけど、それがものすごいことだということは、よくわかった。
アルバイトが忙しくなる秋のお彼岸前に、燈子ちゃんは帰国した。
遠い世界のはずだったテオさんから、内々のお伺いを持って。
「へえ?テオさんが?偉い出世しはってんねえ~。で?うちに来はるん?何で?」
残暑の厳しさにお扇子をパタパタさせながら、お家元が首をかしげた。
「テレビ番組の取材だそうです。次にテオさんが振付する舞台が注目されてるらしくて、そのメイキングを撮ってて。テオさん、ダンサーとしてダメになったどん底の時に見た日本舞踊が自分の振付師としての原動力になっている、って発言してるらしいです。ね?」
「はい。すみません、何だかややこしいことで。たぶんビジュアルが華やかだから少し使いたいだけだと思うんですけど……。」
私の隣で燈子ちゃんが申し訳なさそうに、そう言った。
「へえ~……。」
お家元はどうとでも取れる空返事をして、お茶を一口飲んだ。
「あれちゃいますん?単にスタッフが京都に遊びに来る理由が欲しいんちゃいますか?……昔からテレビやら雑誌やら新聞やら失礼な人が多いから、私は遠慮させてもろていい?この件は副家元に一任しますから。好きにやってください。ああ!ただし、撮影前に企画内容とギャラを明確にすることと、出来上がった番組を流す前に内容確認することをちゃんと契約せんとあかんで。」
お家元の返事につい、ぽか~んとしてしまった。
「……よくあることなんですか?」
「よく、ではないけど、そりゃ、あります。彩乃さん個人にかて、ちっちゃい頃からなんべんもあります。取材もドラマ出演も舞台出演も。もちろん全部断ってきましたけど。」
え!?
「うちはマスコミに有名にしてもらう必要はないんです。宣伝なんか必要ありません。それ以上に怖いんは品格を落とすことです。それさえ肝に銘じてくれてたらええわ。」
お家元の言葉の重みをズシンと感じつつ、私はうなずいた。
彩乃くんは、あっさりOK。
……お家元と違って、あまりにも何も考えてなさそうなので、逆に心配になった。
やっぱりこの人、極楽とんぼだわ。



