「あ、これ……なっちゅん、好きな言葉。」
前に中国語で言ってたっけ、と懐かしく思い出す。
「てか……それ……記入してある……」
燈子ちゃんがぷるぷると震えながら指さしたのは、何と、白地に茶色い罫線と文字の婚姻届!
しかも、佐野、自分の記入欄は全部書き込んで捺印までしてあるんですけど!
おいおいおい!
「何考えてるんや、あいつ。結婚してるくせに。まず離婚届出してから持ってこいっちゅうねん!」
つい怒りで言葉遣いが乱れる私。
でも、奈津菜は笑みさえ浮かべて穏やかな顔して、サイン帳と婚姻届をかき抱いた。
「……口惜しい……私のことを一生忘れさせへんつもりやったのに、やり返された。」
聞けば、奈津菜はバレンタインの時にモンブランの万年筆に離婚届を添えて佐野に贈ったらしい。
シュールすぎるやりとりに、燈子ちゃんと私はどう反応すればいいかわからなかった。
奈津菜が泣き止むのを待って、私たちは帰路に就いた。
教室に、廊下に、ピロティに、スタンドや桜、藤棚……目に付くもの全てが愛しい。
別れを惜しみながらスローブを上がり、顔なじみの守衛さんに挨拶して門を出ると
「卒業おめでとう。」
と、彩乃くんが薔薇の花束を右肩にかついで立っていた。
なんで!?
「え~~~!どしたん!?来るなら言うてくれたら、早く出るのに!めっちゃ待ったやろ?」
卒業式が終わってから、かなり時間が過ぎたはず。
彩乃くんは、苦笑いして
「おぅ。裏門から帰ったんかと諦めかけてたわ。」
と、言いながら私に大きな深紅の薔薇の花束を、奈津菜と燈子ちゃんに黄白ピンクのミックスのやっぱり大輪の薔薇の花束をくれた。
「あれ?川村さんは?」
遙香の分のミックス花束を持て余す彩乃くん。
「遙香、バイト先ねん。すぐ隣(の山)やし、届けに行こうか?」
せっかくこんなに立派な花束を人数分準備してくれたなら、無駄にしたくない。
……てか、彩乃くんにしては気が利きすぎ?
「これって、義人くんに相談した?」
奈津菜や燈子ちゃんと別れて、彩乃くんと2人になってから聞いてみた。
「ああ。あきに極楽鳥でも買うて行くってゆーたら、馴染みの花屋に電話して準備してくれた。えらいおっきいのん作ってくれたから、持ってくるのん恥ずかしかったわ。」
……そうやろうなあ。
「花言葉まで考慮してあるから、絶対そうやと思った。さすがやねえ、義人くん。」
私だけじゃなくて人数分ちゃんと作ってくれるところが、にくいね。
でも彩乃くんは、自分じゃなく義人くんが褒められたことに少しムッとしていた。
「ごめんごめん。ありがとう。すごくびっくりして、すごくうれしかったよ。」
慌ててそう言いながら、深紅の薔薇を抱えたまま、彩乃くんの腕にぎゅ~っとしがみついた。
「もう卒業したから制服でもくっついちゃう♪」
私が笑顔でそう言うと、彩乃くんも満足そうに笑ってくれた。
前に中国語で言ってたっけ、と懐かしく思い出す。
「てか……それ……記入してある……」
燈子ちゃんがぷるぷると震えながら指さしたのは、何と、白地に茶色い罫線と文字の婚姻届!
しかも、佐野、自分の記入欄は全部書き込んで捺印までしてあるんですけど!
おいおいおい!
「何考えてるんや、あいつ。結婚してるくせに。まず離婚届出してから持ってこいっちゅうねん!」
つい怒りで言葉遣いが乱れる私。
でも、奈津菜は笑みさえ浮かべて穏やかな顔して、サイン帳と婚姻届をかき抱いた。
「……口惜しい……私のことを一生忘れさせへんつもりやったのに、やり返された。」
聞けば、奈津菜はバレンタインの時にモンブランの万年筆に離婚届を添えて佐野に贈ったらしい。
シュールすぎるやりとりに、燈子ちゃんと私はどう反応すればいいかわからなかった。
奈津菜が泣き止むのを待って、私たちは帰路に就いた。
教室に、廊下に、ピロティに、スタンドや桜、藤棚……目に付くもの全てが愛しい。
別れを惜しみながらスローブを上がり、顔なじみの守衛さんに挨拶して門を出ると
「卒業おめでとう。」
と、彩乃くんが薔薇の花束を右肩にかついで立っていた。
なんで!?
「え~~~!どしたん!?来るなら言うてくれたら、早く出るのに!めっちゃ待ったやろ?」
卒業式が終わってから、かなり時間が過ぎたはず。
彩乃くんは、苦笑いして
「おぅ。裏門から帰ったんかと諦めかけてたわ。」
と、言いながら私に大きな深紅の薔薇の花束を、奈津菜と燈子ちゃんに黄白ピンクのミックスのやっぱり大輪の薔薇の花束をくれた。
「あれ?川村さんは?」
遙香の分のミックス花束を持て余す彩乃くん。
「遙香、バイト先ねん。すぐ隣(の山)やし、届けに行こうか?」
せっかくこんなに立派な花束を人数分準備してくれたなら、無駄にしたくない。
……てか、彩乃くんにしては気が利きすぎ?
「これって、義人くんに相談した?」
奈津菜や燈子ちゃんと別れて、彩乃くんと2人になってから聞いてみた。
「ああ。あきに極楽鳥でも買うて行くってゆーたら、馴染みの花屋に電話して準備してくれた。えらいおっきいのん作ってくれたから、持ってくるのん恥ずかしかったわ。」
……そうやろうなあ。
「花言葉まで考慮してあるから、絶対そうやと思った。さすがやねえ、義人くん。」
私だけじゃなくて人数分ちゃんと作ってくれるところが、にくいね。
でも彩乃くんは、自分じゃなく義人くんが褒められたことに少しムッとしていた。
「ごめんごめん。ありがとう。すごくびっくりして、すごくうれしかったよ。」
慌ててそう言いながら、深紅の薔薇を抱えたまま、彩乃くんの腕にぎゅ~っとしがみついた。
「もう卒業したから制服でもくっついちゃう♪」
私が笑顔でそう言うと、彩乃くんも満足そうに笑ってくれた。



