彼は藤娘

受験が終ったらすぐに免許を取りに通うつもりらしいけど、今のところ彩乃くんはまだ車を運転できない。

……なぜか、義人くんは既に取ってはるけど……義人くんのほうが偏差値の高い大学を受験するのに……余裕だなあ。
ちなみに義人くんは、合同コーラスメンバーを率いて各校の文化祭で合唱して回るのも、皆勤賞だった。
さすがに夜遊びは控えてるらしいけど。

宴も酣(たけなわ)となり、大きなクリスマスケーキをみんなで分けて、いただく。
上垣さんは、自分の分のケーキを遥香に渡した。
「甘いもの、お嫌いなんですか?」

「いや。普通に好きですけど、今日の料理はカロリーオーバーだと思いますので。」
燈子ちゃんにそう説明する上垣さんに、遥香が微妙な顔をする。
「私も太っちゃう……お腹もふくれたし、2個は多い……」

すると上垣さんは、ニヤリと笑った。
「川村遥香くんは痩せすぎだから、少し太ったぐらいがちょうどいい。食べなさい。」

遥香が、ぶわっと赤くなった。
……かわいいな。

「上垣さんもむしろ細いと思いますよ?」
私がそう言うと、上垣さんは首をゆっくり振った。
「私の場合は職業上、長時間正座をしなければいけません。ただでさえ筋肉質で重量がありますので節制しております。女性はふくよかなほうが魅力的ですよ。」

それを聞いて、遥香は一気に2つのケーキを食べた。

上垣さんは薄笑いを浮かべてそれを見ていた。
その目がサディスティックに光っていることに気づき、燈子ちゃんと苦笑しあった。

うん、間違いないよ。
上垣さん、遥香のこと、気に入ってる。
女性としてというよりは、おもちゃとして、かもしれないけど。



「というわけで、お坊さんとの忘年会はクリスマスパーティーのようでした。」
年末の土曜日の午後、彩乃くんの腕の中で、恒例となった一週間の報告をした。

彩乃くんは私の首筋に唇を這わせていたのに、気に入らなかったのか、鎖骨に歯を立てた。
「痛っ!」
骨、痛いって。

「俺がクリスマスも正月も諦めて最後の追い込みしてるのに、あきは楽しそうやん。」
「……逆恨みされてもなあ。てか、彩乃くん、それでもきっちり土曜は遊んでるやん。」
本当に、判を押したように土曜日ごとに、彩乃くんは私と過ごした。

「遊んでるんとちゃうわ。俺は一週間分疲弊した頭と体と心を癒してるんや。」
彩乃くんはムキになってそう言うと、ぐりぐりと自分の頭を私の貧弱な乳房に押しつけた。

「やん!くすぐったいって!」
彩乃くんの腕から逃れようともがいたけど、出させてもらえなかった。

「ダメ!あきはすぐ逃げようとする!」
「逃げへんから~。」

そんな風にじゃらじゃらと過ごす時間が、彩乃くんだけじゃなく私にとってもどんなに大切か……。