彼は藤娘

「いた!もう!びっくりしたやん!またどっか行ってしもたんか思ったわ。」

また、って。
……何かトラウマになるようなこと、したっけ?

「枝垂れ、綺麗やなあ、と思って。」
私はそう言って、彩乃くんを手招きした。

彩乃くんは私の隣に腰を下ろすと、羽布団を二人の肩に羽織るようにかけた。
「風邪ひくで。……身体、つらくないか?」
いたわりが、うれしい。

「うん。大丈夫、かな。」
最中は、腸がえぐられてるのか!?ってぐらい痛くて、実は少し吐き気も催したりしたけど、それは内緒。
そのうち馴れるのでしょう。

「彩乃くんは?……その……私で、よかった?」
さすがに、自分の身体で満足できたか?とは聞けず、私は微妙な言い回しをしてみたけれど、どうとでも取れるニュアンスに気づいて照れた。

彩乃くんは、私の肩に回した手に力を込めた。
「最高。もっとしたい。毎日したい。」
こらこら!

「盛りのついた猿になっちゃった?」
うれしいような、困ったような……
でもまあ、これだけ喜んでくれてるなら、ま、いっか。

「いや。理性があるからな。受験終わるまで、土曜だけで我慢する!」
胸を張る彩乃くんに、心の中で苦笑い。

毎週する気か!
……生理の時は無理やで。

いろいろ言いたいことはあるような気がしたけど、私は彩乃くんの肩に頭を預けて、つぶやいた。
「枝垂れ、夢のように綺麗やね……」




♪ジングルベ~ルジングルベ~ル鈴が~鳴る~♪

「お坊さんがクリスマスソング歌ってるのって、おもしろいですね。」
上垣(うえがき)さんが低いエエ声で無意識に口ずさんでらしたのに、思わず私はそう言ってしまった。

「……失礼いたしました。」
慌てて無表情を取り繕って、上垣さんは目を閉じて頭を下げた。
変な人。

てか、そもそもクリスマスイブに忘年会を開くこと自体が笑える。
お坊さんばかりなのに、どう見てもクリスマスパーティーだ。
七面鳥じゃないけど、鶏の丸焼きや、オードブル……ケーキにはサンタクロースが乗ってるし。

建前が必要なのかな、やっぱり。


高3の冬休み、遥香に頼まれて本山の墓所で短期アルバイトの助っ人をすることになった。
9月中に無事に希望学部への大学進学も決まった遥香・燈子ちゃん・私の3人一緒に、だ。

仕事はゆるい事務作業なのだが、出入りするお坊さん達がとにかく個性的で楽しい。
遥香の好きな上垣真秀さんの人となりもやっとわかってきた。

とにかく真面目な朴念仁ながら、妙な迫力と可愛さを持ち合わせてらっしゃるというか。