昼休み、私は佐野と結婚して退職したという元音楽教諭の携帯に電話した。
合同コーラスの件で連絡先を交換していたし、うちの文化祭でも発表したいと相談していたのも中途半端なままだし。
生徒会室に遥香と燈子ちゃんと籠(こ)もり、スピーカー機能で2人に会話が聞こえるようにする。
「もしもし~?村上です。先生、結婚退職ってほんまですか?」
電話の向こうから元音楽教諭の幸せそうな声が聞こえてくる。
『そうなのよ。突然辞めてごめんなさいね。合同コーラスの件でしょ?教頭先生と生徒指導の先生には伝えてあるから、たぶん大丈夫だと思う。』
「あ、そうなんですか!ありがとうございます。安心しました。ところで、私、今年、佐野先生が担任なんですけど……先生の旦那様って佐野先生なんですか?」
なるべく平常心で会話を続ける。
『ええ。まだみんなには言わないでね。ちょっと順番が前後しちゃったから……』
「じゃ、赤ちゃんが!おめでとうございます。え~、いつ頃出産予定なんですか?」
『ふふ、ありがとう。出産してから発表することになってるの。9月15日の予定よ。』
「わ~。2学期始まってすぐですね~!あ!内部進学の試験の日ぃちゃいます?うわ~~~、すごい日。かわいい赤ちゃん産んでくださいね。」
電話を切るのを待って、遥香がため息をついた。
「幸せいっぱい、やね。」
「うん。前から思ってたけど、なっちゅんと似たタイプよね。かわいいおっとりマイペースでちゃっかりしてるお嬢様。佐野の好みのタイプやねんろうなあ。」
燈子ちゃんは舌打ちした。
「ほな結局、佐野が悪いんやな。」
「佐野先生は、悪くないよ。優しすぎるの。」
そう言いながら奈津菜が入って来た。
なっちゅん!優しいとかって問題じゃないやん!
たぶん私だけじゃなく、遥香も燈子ちゃんも言いたい言葉を飲み込んだと思う。
今の奈津菜に何を言っても伝わらない、ただ機嫌を損ねるか悲しい想いをさせてしまう気がする。
「心配かけてごめんね。でももう大丈夫やから。」
大丈夫、ってどういう意味で?
「逃げないで佐野先生に向き合ってみる。」
そっちか!
「いや、逃げようよ。逃げるが勝ちやで、この場合。」
思わずそう言ってしまうと、奈津菜は淋しそうに笑った。
「……佐野先生の気持ちが私から離れたわけじゃないのに、あきらめられへん。」
なっちゅん!!
あかん……不倫まっしぐらや……。
翌日、進路調査票が配られた。
当然みんな内部進学だと思ってた……ら!
奈津菜は外を受験するらしい。
「しかも、彩乃くんと同じとこ~!なんで!?」
「いや、学部違うし。私は人間科学部で行動統計学を勉強したいねん。」
……意味わからん。
合同コーラスの件で連絡先を交換していたし、うちの文化祭でも発表したいと相談していたのも中途半端なままだし。
生徒会室に遥香と燈子ちゃんと籠(こ)もり、スピーカー機能で2人に会話が聞こえるようにする。
「もしもし~?村上です。先生、結婚退職ってほんまですか?」
電話の向こうから元音楽教諭の幸せそうな声が聞こえてくる。
『そうなのよ。突然辞めてごめんなさいね。合同コーラスの件でしょ?教頭先生と生徒指導の先生には伝えてあるから、たぶん大丈夫だと思う。』
「あ、そうなんですか!ありがとうございます。安心しました。ところで、私、今年、佐野先生が担任なんですけど……先生の旦那様って佐野先生なんですか?」
なるべく平常心で会話を続ける。
『ええ。まだみんなには言わないでね。ちょっと順番が前後しちゃったから……』
「じゃ、赤ちゃんが!おめでとうございます。え~、いつ頃出産予定なんですか?」
『ふふ、ありがとう。出産してから発表することになってるの。9月15日の予定よ。』
「わ~。2学期始まってすぐですね~!あ!内部進学の試験の日ぃちゃいます?うわ~~~、すごい日。かわいい赤ちゃん産んでくださいね。」
電話を切るのを待って、遥香がため息をついた。
「幸せいっぱい、やね。」
「うん。前から思ってたけど、なっちゅんと似たタイプよね。かわいいおっとりマイペースでちゃっかりしてるお嬢様。佐野の好みのタイプやねんろうなあ。」
燈子ちゃんは舌打ちした。
「ほな結局、佐野が悪いんやな。」
「佐野先生は、悪くないよ。優しすぎるの。」
そう言いながら奈津菜が入って来た。
なっちゅん!優しいとかって問題じゃないやん!
たぶん私だけじゃなく、遥香も燈子ちゃんも言いたい言葉を飲み込んだと思う。
今の奈津菜に何を言っても伝わらない、ただ機嫌を損ねるか悲しい想いをさせてしまう気がする。
「心配かけてごめんね。でももう大丈夫やから。」
大丈夫、ってどういう意味で?
「逃げないで佐野先生に向き合ってみる。」
そっちか!
「いや、逃げようよ。逃げるが勝ちやで、この場合。」
思わずそう言ってしまうと、奈津菜は淋しそうに笑った。
「……佐野先生の気持ちが私から離れたわけじゃないのに、あきらめられへん。」
なっちゅん!!
あかん……不倫まっしぐらや……。
翌日、進路調査票が配られた。
当然みんな内部進学だと思ってた……ら!
奈津菜は外を受験するらしい。
「しかも、彩乃くんと同じとこ~!なんで!?」
「いや、学部違うし。私は人間科学部で行動統計学を勉強したいねん。」
……意味わからん。



