教室に奈津菜はいなかった。
「遙香。なっちゅん来てへん?」
まだ何も知らないらしい遙香は、首をかしげる。
「そういえばまだやねえ。あきちゃんも遅いし2人ともどうしたんかなあ、って思っててんけど。」
「あのね、佐野が……」
遙香に話そうとした時、当事者の佐野が教室に入ってきた。
点呼を取るわけでもなく
「みんな、いるな。はい、朝礼終わり。今日からちゃんと掃除しぃや。」
と、言い置いて出ていこうとした。
「先生!結婚したってほんまですか?お祝いしたいんですけど!」
燈子ちゃんが手を挙げて立ち上がり、めっちゃ堅い表情と声でそう詰問した。
佐野は、あからさまにたじろいだ。
本当なんだ。
「……諸事情でまだ言えんけど、まあ、そういうことだ。」
佐野はそれだけ言って逃げるように去っていった。
教室中が騒然とした。
正確な情報を知っている者はいなかったが、佐野と音楽教諭が共に行動している目撃情報はけっこうあった。
私も昨秋見たもんなあ。
つまり、少なくともあの頃から二股、もしくは三股以上やった、ってわけね。
なっちゅん……。
昨日はあんなに幸せそうだったのに……。
私はその日何度も、主のいない空っぽの机を見てはため息をついた。
放課後、遙香と燈子ちゃんは奈津菜の家を訪ねるらしい。
私はお茶のお稽古の日なので、断念。
いつもはお家元に寄らない日でもこまめに彩乃くんにラインでイロイロ報告するのだけれど、これからはそれも我慢。
……てか、我慢くらべ?
私も淋しいけど、彩乃くんだって絶対淋しいはず!
これって、彩乃くんの愛情にあぐらをかいたイケズの続き、なのかもしれない。
帰宅後、すぐにお茶のお稽古へ。
他の社中さんのいる手前、お稽古中はおとなしくしている。
が、他のかたがたが帰らはるのを待って、私はいつものように師に対する遠慮を捨てる。
「せんせ~え。彩乃くん、急に外部受験するとか言い出さはってん。すごいショック……。」
まずは小手調べ。
「あらあら。大変。ほな、あきちゃん、遊んでもらえんくなるん?」
私はこの師に対しては、たぶん自分の両親以上にあけすけに甘えてきたような気がする。
幼少時よりも成長するにつれて、年の離れた友人として。
「うん。しかもね!生徒会引退したら、お家元のお手伝いするってゆーてたじゃないですか~?私はココに来る日以外は毎日行くつもりしてるのに、彩乃くんは週1回しか来ぉへんとか言うんてすよ!ひどいと思いません?彩乃くんのためにがんばろうって思ってるのに、当の本人がいいひんとこでなんて肩身が狭くって!」
……私の思い違いじゃなければ、師が幼い私を連れてお家元に何度か行ったのは、彩乃くんのお父さまが亡くなった後。
お家元は、お気に入りだった師に、改めて芳澤流に関わって欲しかったのではなかろうか。
「遙香。なっちゅん来てへん?」
まだ何も知らないらしい遙香は、首をかしげる。
「そういえばまだやねえ。あきちゃんも遅いし2人ともどうしたんかなあ、って思っててんけど。」
「あのね、佐野が……」
遙香に話そうとした時、当事者の佐野が教室に入ってきた。
点呼を取るわけでもなく
「みんな、いるな。はい、朝礼終わり。今日からちゃんと掃除しぃや。」
と、言い置いて出ていこうとした。
「先生!結婚したってほんまですか?お祝いしたいんですけど!」
燈子ちゃんが手を挙げて立ち上がり、めっちゃ堅い表情と声でそう詰問した。
佐野は、あからさまにたじろいだ。
本当なんだ。
「……諸事情でまだ言えんけど、まあ、そういうことだ。」
佐野はそれだけ言って逃げるように去っていった。
教室中が騒然とした。
正確な情報を知っている者はいなかったが、佐野と音楽教諭が共に行動している目撃情報はけっこうあった。
私も昨秋見たもんなあ。
つまり、少なくともあの頃から二股、もしくは三股以上やった、ってわけね。
なっちゅん……。
昨日はあんなに幸せそうだったのに……。
私はその日何度も、主のいない空っぽの机を見てはため息をついた。
放課後、遙香と燈子ちゃんは奈津菜の家を訪ねるらしい。
私はお茶のお稽古の日なので、断念。
いつもはお家元に寄らない日でもこまめに彩乃くんにラインでイロイロ報告するのだけれど、これからはそれも我慢。
……てか、我慢くらべ?
私も淋しいけど、彩乃くんだって絶対淋しいはず!
これって、彩乃くんの愛情にあぐらをかいたイケズの続き、なのかもしれない。
帰宅後、すぐにお茶のお稽古へ。
他の社中さんのいる手前、お稽古中はおとなしくしている。
が、他のかたがたが帰らはるのを待って、私はいつものように師に対する遠慮を捨てる。
「せんせ~え。彩乃くん、急に外部受験するとか言い出さはってん。すごいショック……。」
まずは小手調べ。
「あらあら。大変。ほな、あきちゃん、遊んでもらえんくなるん?」
私はこの師に対しては、たぶん自分の両親以上にあけすけに甘えてきたような気がする。
幼少時よりも成長するにつれて、年の離れた友人として。
「うん。しかもね!生徒会引退したら、お家元のお手伝いするってゆーてたじゃないですか~?私はココに来る日以外は毎日行くつもりしてるのに、彩乃くんは週1回しか来ぉへんとか言うんてすよ!ひどいと思いません?彩乃くんのためにがんばろうって思ってるのに、当の本人がいいひんとこでなんて肩身が狭くって!」
……私の思い違いじゃなければ、師が幼い私を連れてお家元に何度か行ったのは、彩乃くんのお父さまが亡くなった後。
お家元は、お気に入りだった師に、改めて芳澤流に関わって欲しかったのではなかろうか。



