「誰がどう見ても同じ筆跡ね。」
背後から議長が覗きこんで、そう言った。
「そうですよね?やっぱり。」
すると、会長が飛んできた。
「へえ。優しい人。わざわざ追いかけてきたあきちゃんに恥をかかせたくなくて、黙ってもう1回書いてくれたんじゃない?」
……会長は、どうやらコイバナには必ず参加したい人らしい。
「あ、でも、そうかも。確か一緒にいた人が、自分が書こうか、みたいに彼に言うてはったんですよ。」
どんな人かまでは思い出せないけど。
「ふうん。それじゃ、あきちゃんが仕事を放り出して追いかけた彼はアンケートを既に書いて提出してくれてたけど、同行者はしてなかったのね。それなのに、あきちゃんの追いかけた彼は、あきちゃんにアンケート用紙を渡されて、黙ってもう一度書いてくれた、と。」
議長が、そんな風にねちっこくまとめて言った。
「あの、ものすごく恥ずかしいんですけど。何度も繰り返されるのは。」
私が半泣きでそう言うと、副会長が大きな声で
「こらー。いつまでサボってるんだー。手ぇ動かせ-。口動かしてもいいけど、それ以上に仕事しろー。」
と注意してくれたおかげで、この話は終わった。
私はデータ入力を続けながら、ぼんやりと彼のことを考えていた。
笑顔が……優しかったな。
てか、わざわざ2度書いてくれてる段階で、本当に優しいよね。
でもたまたま私が、彼が先に書いてくれてたアンケート用紙に気づいたからわかったけど、もし他の役員が入力してたらわからなかったと思う。
……優しさに気づけてよかった。
帰り道、副会長がボソッと言った。
「あきの好きになった男って、なんか、めんどくさそう。」
「そうですか?優しいな~、って思ってたんですけど。」
副会長は顔の前で手首のスナップを利かせて振った。
「いやいやいや!わかりにくすぎるやろ。普通『優しい』って、もっとわかりやすく優しくしてくれることを意味するんちゃう?気づいてもらえな、意味ないやん。」
なるほど。
副会長の言うこともわかる。
わかるけど……
「でも、わかりやすい優しさ振りまいてたらもてはりそうで、嫌やな。わかりにくくていいです。がんばって、私だけが彼の優しさをわかってあげられるほうが、ライバル少なそうやし。」
私がそう言うと、副会長は苦笑した。
「あき……一歩間違ったら、ダメな男に振り回される人生だよ、それ。気ぃつけや~。」
……彼がダメでないことを願う限りです。
体育祭は無事に終わった。
奈津菜は応援合戦を終えると、泣き崩れた。
私たちにもこみ上げるものがあったが、2年、3年とまだ続くため、無理矢理感情を抑え込む。
しかし3年生の伝統の応援合戦には、何度も鳥肌が立ち、結局最後には感極まってもらい泣きしてしまった。
2年後、私達もあれをするのかと思うと身の引き締まる想いがした。
背後から議長が覗きこんで、そう言った。
「そうですよね?やっぱり。」
すると、会長が飛んできた。
「へえ。優しい人。わざわざ追いかけてきたあきちゃんに恥をかかせたくなくて、黙ってもう1回書いてくれたんじゃない?」
……会長は、どうやらコイバナには必ず参加したい人らしい。
「あ、でも、そうかも。確か一緒にいた人が、自分が書こうか、みたいに彼に言うてはったんですよ。」
どんな人かまでは思い出せないけど。
「ふうん。それじゃ、あきちゃんが仕事を放り出して追いかけた彼はアンケートを既に書いて提出してくれてたけど、同行者はしてなかったのね。それなのに、あきちゃんの追いかけた彼は、あきちゃんにアンケート用紙を渡されて、黙ってもう一度書いてくれた、と。」
議長が、そんな風にねちっこくまとめて言った。
「あの、ものすごく恥ずかしいんですけど。何度も繰り返されるのは。」
私が半泣きでそう言うと、副会長が大きな声で
「こらー。いつまでサボってるんだー。手ぇ動かせ-。口動かしてもいいけど、それ以上に仕事しろー。」
と注意してくれたおかげで、この話は終わった。
私はデータ入力を続けながら、ぼんやりと彼のことを考えていた。
笑顔が……優しかったな。
てか、わざわざ2度書いてくれてる段階で、本当に優しいよね。
でもたまたま私が、彼が先に書いてくれてたアンケート用紙に気づいたからわかったけど、もし他の役員が入力してたらわからなかったと思う。
……優しさに気づけてよかった。
帰り道、副会長がボソッと言った。
「あきの好きになった男って、なんか、めんどくさそう。」
「そうですか?優しいな~、って思ってたんですけど。」
副会長は顔の前で手首のスナップを利かせて振った。
「いやいやいや!わかりにくすぎるやろ。普通『優しい』って、もっとわかりやすく優しくしてくれることを意味するんちゃう?気づいてもらえな、意味ないやん。」
なるほど。
副会長の言うこともわかる。
わかるけど……
「でも、わかりやすい優しさ振りまいてたらもてはりそうで、嫌やな。わかりにくくていいです。がんばって、私だけが彼の優しさをわかってあげられるほうが、ライバル少なそうやし。」
私がそう言うと、副会長は苦笑した。
「あき……一歩間違ったら、ダメな男に振り回される人生だよ、それ。気ぃつけや~。」
……彼がダメでないことを願う限りです。
体育祭は無事に終わった。
奈津菜は応援合戦を終えると、泣き崩れた。
私たちにもこみ上げるものがあったが、2年、3年とまだ続くため、無理矢理感情を抑え込む。
しかし3年生の伝統の応援合戦には、何度も鳥肌が立ち、結局最後には感極まってもらい泣きしてしまった。
2年後、私達もあれをするのかと思うと身の引き締まる想いがした。



