彼は藤娘

再び学校に辿りついた時には、もう受付の片づけどころか、閉会式代わりの入賞クラスの発表も終わっていた。
既に帰り始める生徒たちもけっこういた。

とりあえず私は、鞄を取りに教室へと行ってみた。
教室では、簡単な打ち上げが開催されていた。
賞は逃したものの、担任教師がジュースとお菓子を差し入れてくれたらしい。
クラスのみんなも、それぞれ持ち寄ったお菓子を供出し、盛況なパーティーになっていた。

「あきちゃん、お疲れ~。わ!汗だく!まだ生徒会のお仕事終わらへんの?大変やねえ。」
奈津菜がそう声をかけてくれた。
「ありがと。てか、なっちゅんかて、これからが本番やん。」
体育祭まであと一週間。
「うん。明日の代休も練習と衣装作り。」
苦笑する奈津菜に私も同じような笑いを返した。
「私も。後片付けで来なあかんねん。」

「私も。次は体育祭の演舞の練習やて。気楽なんは遥香だけやな~、『三太郎』くんとお泊りデートって、乾杯にも参加せんと帰ってったわ。」
燈子ちゃんが、レモンソーダを片手にそう言いながら近づいてくる。
「はい、これ、あきちゃんの分。キープしといた。」

「わ!炭酸ありがたい!」
私は燈子ちゃんからレモンソーダを受け取ると、一気に飲み干した。
「……すごい。なんか、全力疾走してきた後みたい。」
奈津菜の言葉に、うんうんと首を縦に振った。
「走った走った。これ、戦利品。」
そう言って、バインダーを見せる。

「アンケート?」
「うん。なんかよくわからんけど、私、好きなんかも、この人のこと。気づいたら、めっちゃ必死で追いかけてしもてたわ。」

そう言いながら、私もアンケート用紙に目を落とす。
やや大きめの線の細い右上がりの字は、不安定な状態で急いで書いたにしてはけっこう綺麗だった。

「好きって……これ女の人の字に見えるねんけど……」
燈子ちゃんが恐る恐るそう言った。

「……あきちゃん、やっぱり女の子が……燈子ちゃんを見る目が時々怪しかったけど……」
どこまで本気で言ってるのか、奈津菜が半笑いで指摘する。

「違うー!確かに最初はどっちかわからんかったけど、男だった!と思う!」

「わからんかった、って。」
燈子ちゃんが苦笑した。

私はどう言えばいいのかわからず、頭をかいた。

確かに私は、綺麗な人が好きだ。

今までにときめいたのは、藤娘を舞っていた女の子とか、幼稚園のバレエの先生とか、青い目の英語教師、それから燈子ちゃんぐらいしか思いつかない。

あとはまあ、芸能人か二次元?
歌舞伎の女形や、歌劇の男役、髪が長かった頃の「IDEA」の一条暎(はゆる)さんとか。

共通点は、み~んな、細くて白くて綺麗なこと。