彼は藤娘

「そうねえ。じゃあ鰻は夜にして、お昼は……」
お母さまが、うーんと考えてはると
「気候も天候もいいし、バーベキューでもする?」
義人くんの提案も……朝から、くど~く感じる。

「お庭でピクニック。色んなサンドイッチを作って。」
奈津菜がポソッとそう言った。

「まあああっ!素敵!『赤毛のアン』みたい!女の子らしくっていいわ~~~!」
一番食いついたのは、お母さまだった。

「ところで彩乃くんは?」
姿が見えないので、ピクニックの準備を始めた義人くんに聞いてみる。

「怒って帰っちゃった。ごめんね、あきちゃん。」
義人くんはさらっとそう言った。

え~~~……。
私がしょんぼりしてると、
「まだおるわ。もうすぐ出るし、怒ってるけどな。飯は食わせてくれ。」
と、彩乃くんがいかにもお風呂上がりって雰囲気でやってきた。

「あ……いた。」
茶目っ気たっぷりに笑ってる義人くんを尻目に、ホッとして近寄る。

「……風呂場の会話、筒抜けやったで。」
笑ってるんだか怒ってるんだか恥ずかしいんだか……彩乃くんは仏頂面でそう言った。

「どこに?」
「隣に。すぐ横に、四阿(あずまや)風の露天風呂があってそっちに入っててんけど……」
そうなんだ!

「え~と、たわいもない話しかしてない……よね?」
彩乃くんは、苦笑した。
「うちの学校の女子、あそこまで賑やかじゃない気がする。女子校って、幼いというか……天真爛漫?……ああ、そや、めんどくさくて悪かったな。」

……あ……。
そういやそんなことも言うてたっけ。
「怒ってる?」

「……いや。」
あ、よかった。

ホッとして、ピクニックのお手伝いに戻ろうとすると、彩乃くんに耳打ちされた。
「明日、あけといて。」
振り返ると、彩乃くんはもう私に背中を向けていた。

「はい!」
心が、声が、足取りが弾んだ。

ピクニックは、ライラックの花の下、これでもか!ってぐらい乙女ちっくに設定された。
奈津菜と意気投合した義人くんのお母さまも参加して、「赤毛のアン」そのままに、手作り酒まで登場した。

お母さまが懇意にしているお店から材料をそのまま持ってきてもらったということで、サンドイッチはやたら豪華で美味しかった。
……クロワッサンにクリームチーズにサーモンに、なぜかキャビアが入ったり。

妙に、話やノリが合うと思ったら、義人くんのお母さまはうちの学校の卒業生だった。
納得!
当時とはもちろん偏差値も含めてイロイロと違う部分も多いけれど、それでも受け継がれてる校風は脈々と続いているから。

今年の秋の文化祭と体育祭には、義人くんのお母さまをご招待しよう。

……年上女性に受けが悪いことを気にしてぎこちない遙香も、そのうち慣れるだろう。