私の気配に気づいたらしく、彩乃くんが目を開けた。
「長袴も稽古してたつもりやってんけど、やっぱり本衣装とは生地の重みが違ったわ。ほな、見ててな。」
彩乃くんが手元のICレコーダーから清元を流す。
♪恋よ恋 われ中空(なかぞら)になすな恋♪
何度も聞いたフレーズなのに、今の私の心に沁みる。
順風満帆、希望いっぱい楽しい恋愛をしてるつもりなのに、こんなに胸が痛くなるなんて。
涙がうるうると浮かんでくる。
♪恋風が来ては 袂(たもと)にかいもつれ
思う中をば吹きわくる 花に嵐の狂いてし♪
彩乃くんが集中してるのに。
ちゃんと見なきゃ。
そう思うのに、涙で彩乃くんが歪んでしまう。
涙がボロボロと零れて落ちる。
♪心そぞろにいずくとも 道行く人に事問えど
岩せく水と我が胸と 砕けて落ちる泪(なみだ)には
かたしく袖の片想い♪
詞(ことば)がイチイチ胸に沁みて、私はこみあげる嗚咽(おえつ)を一生懸命我慢した。
彩乃くんの邪魔しちゃいけない。
その一心で、涙と鼻水が流れるのをひたすらハンカチで押さえた。
見えない。
彩乃くんがにじんで揺れる。
すっぴんの保名は今この時だけやのに。
もったいない。
もっと、ちゃんと見たい。
♪そのおもかげに露ばかり 似た人あらば教えてと
振りの小袖を身に添えて 狂い乱れて伏し沈む♪
清元が終わり、彩乃くんが私を見る。
「うっ……」
私は、ようやく嗚咽した。
「あき?どうした?」
彩乃くんが、駆け寄ってくる。
私は、我慢していた分、堰を切ったように号泣した。
泣きじゃくり続けて、言葉をなかなか紡ぎ出せない。
「大丈夫か?」
彩乃くんが、私の両肩を掴んでぐちゃぐちゃの顔を覗き込む。
恥ずかしい。
でも、でも、でも……
「……好き。」
涙でボロボロなのに、私、何言ってるんだろう。
自分でもおかしいと思うのに、歯止めが効かない。
「好き。彩乃くんが、好き。めっちゃ好きやねん。好き。好き。好き……」
言葉と一緒に涙がダバダバ流れる。
鼻水は落ちないようにすすりながら、私は押さえようのない恋情をぶつけた。
彩乃くんは綺麗な顔を歪めて切なそうな表情で私を見ていたけれど、私の言葉が途切れるのを待って口を開いた。
「……ほんまやな。言葉の威力、でっかいな。他のやつらに言われても何とも思わんかったから、言葉、なめてたわ。あきの気持ちなんか最初からわかってるし、今更やのにな。せやのに体中が痺れたように疼く。胸が甘く痛むわ。」
彩乃くんの言葉に涙が一旦止まった。
「ありがとうな。」
そう言って彩乃くんは私を抱きしめようとした。
はじめてのハグ!
「長袴も稽古してたつもりやってんけど、やっぱり本衣装とは生地の重みが違ったわ。ほな、見ててな。」
彩乃くんが手元のICレコーダーから清元を流す。
♪恋よ恋 われ中空(なかぞら)になすな恋♪
何度も聞いたフレーズなのに、今の私の心に沁みる。
順風満帆、希望いっぱい楽しい恋愛をしてるつもりなのに、こんなに胸が痛くなるなんて。
涙がうるうると浮かんでくる。
♪恋風が来ては 袂(たもと)にかいもつれ
思う中をば吹きわくる 花に嵐の狂いてし♪
彩乃くんが集中してるのに。
ちゃんと見なきゃ。
そう思うのに、涙で彩乃くんが歪んでしまう。
涙がボロボロと零れて落ちる。
♪心そぞろにいずくとも 道行く人に事問えど
岩せく水と我が胸と 砕けて落ちる泪(なみだ)には
かたしく袖の片想い♪
詞(ことば)がイチイチ胸に沁みて、私はこみあげる嗚咽(おえつ)を一生懸命我慢した。
彩乃くんの邪魔しちゃいけない。
その一心で、涙と鼻水が流れるのをひたすらハンカチで押さえた。
見えない。
彩乃くんがにじんで揺れる。
すっぴんの保名は今この時だけやのに。
もったいない。
もっと、ちゃんと見たい。
♪そのおもかげに露ばかり 似た人あらば教えてと
振りの小袖を身に添えて 狂い乱れて伏し沈む♪
清元が終わり、彩乃くんが私を見る。
「うっ……」
私は、ようやく嗚咽した。
「あき?どうした?」
彩乃くんが、駆け寄ってくる。
私は、我慢していた分、堰を切ったように号泣した。
泣きじゃくり続けて、言葉をなかなか紡ぎ出せない。
「大丈夫か?」
彩乃くんが、私の両肩を掴んでぐちゃぐちゃの顔を覗き込む。
恥ずかしい。
でも、でも、でも……
「……好き。」
涙でボロボロなのに、私、何言ってるんだろう。
自分でもおかしいと思うのに、歯止めが効かない。
「好き。彩乃くんが、好き。めっちゃ好きやねん。好き。好き。好き……」
言葉と一緒に涙がダバダバ流れる。
鼻水は落ちないようにすすりながら、私は押さえようのない恋情をぶつけた。
彩乃くんは綺麗な顔を歪めて切なそうな表情で私を見ていたけれど、私の言葉が途切れるのを待って口を開いた。
「……ほんまやな。言葉の威力、でっかいな。他のやつらに言われても何とも思わんかったから、言葉、なめてたわ。あきの気持ちなんか最初からわかってるし、今更やのにな。せやのに体中が痺れたように疼く。胸が甘く痛むわ。」
彩乃くんの言葉に涙が一旦止まった。
「ありがとうな。」
そう言って彩乃くんは私を抱きしめようとした。
はじめてのハグ!



