それから一週間後の月曜日、いよいよ待ちに待った修学旅行当日を迎えた。
午前七時に学園前の駅に六人で待ち合わせをし、羽田空港へ向かう約束になっていた。この修学旅行では、飛行機やバスは名簿順だが、特に班行動などはなく、全てが自由行動である。
駅には明彦が一番最初にきていた。
「おはよう、明彦!」
私は手を振って明彦のもとに駆け寄った。
明彦は先日、銀座で一緒に選んだ服を着ていた。
「やっぱりそれ似合ってる。私ってセンスあるなー!」
「おはよう。凛子は珍しくジーパンなんだな。いつもスカートのイメージしかないから、何だか新鮮だよ」
「そう?」
そんな会話を交わしていると、続いて純也と博美がやってきた。
「おはよう、何だか私服って変な感じ。あたし凛子のジーパン姿なんて、初めて見た」
「後は輝と矢沢さんか。あのふたり遅刻してきそうだな」
純也の予想通り、結衣と輝は約束の時間より二十分も遅刻してきた。
「ごめん!出がけに忘れ物に気付いて、遅くなっちゃった」
結衣と輝は息を切らせて、手を握りながら走っきた。
私達は切符を買い改札を入った。
羽田空港には八時半の集合予定だったので、比較的時間には余裕があった。
車内では男子と女子で、向かい合わせに座った。
「ねぇ、結衣のその靴、凄く可愛い!」
「これ、博美とこの間、渋谷に行った時に買ったんだ。たまには凛子も付き合いなさいよ」
「うん。今度、私も連れて行って!」
「凛子に渋谷は似合わない。凛子は自然児だからな」
明彦は素っ気なく言ったが、眼差しは真剣だった。
「たまには渋谷くらい、行ってみたいな」
「まぁ、凛子が珍しい。どうしちゃったの?」
博美が目を丸くした。
「最近、結衣や博美がどんな所に行っているのかいるのか、興味があるの。だって、可愛い服や靴、沢山もっているんだもの」
「そっかぁ、ついに凛子も目覚めたか!博美、今度、凛子も連れて行こうよ」
「そうだね、じゃあ今度、一緒に行こうよ」
「うん、私もね、たまにはお洒落したいな…と思って」
私はそう言って明彦を見た。
「まぁ、たまにはいいんじゃないか。この服この間、凛子に選んで貰ったんだ」
そう言うと、皆が一斉に明彦に注目した。
「へぇー、凛子ちゃん、なかなかセンスあるじゃん!」
輝がちらりと私を見て言った。
「小川さんと明彦もデートするんだ」
「そんなんじゃないの、中原君。たまたま先週、他の用事で銀座に行ったから、選んであげただけなの」
「凛子、何真っ赤になってるのよー!そろそろ付き合ってるって、認めてもいいんじゃない?私と純也だって、付き合い始めたんだし」
「そうだよ、ふたりが付き合うことは俺達にとっても喜ばしい事なんだから」
純也が私と明彦を交互に見て言った。
「まぁ、じゃあそういうことにしておこうぜ、凛子」
見ると、そっぽを向いた明彦の顔は赤らんでいた。