「12番卓、なんで案内した?」

12番卓…あ、

「2名様だったので…荷物置きは持って行きましたけど」

「あれだけの買い物袋、うちの店の荷物置きには入りきらないだろうが」

「それはそうですが、
次に4名様も控えていらっしゃいましたし、
なるべく多くのお客様に料理を提供するためには仕方ないと思います」

自分は正しいはずだと内心首を傾げる
司の反論に平野が考え込む

「…まず、誰が待っているお客様とお食事中のお客様に差をつけて良いと言った?」

「え…?」

横から頭を思いっきり殴られたような衝撃が走った
なんか凄く嫌な予感がする…

「今の考えは待っているお客様のためなら案内したお客様が不自由してもいいって聞こえる」

「そういう意味じゃ…!」

反発しながら心が竦んだ
お客様より自分の都合を優先したと、店長はそう言ってる
耳が痛い…聞きたくない

「次に、ここはショッピングモールだ。
買い物目当てのお客様が多い。
買い物帰りのお客様にうちの店は不便だと認識されたら長期的に客数が減る、以上」

「………」

いつもこうだ
良いことがあっても、簡単に潰れてしまうくらいの否定と叱責の繰り返し

「これは俺の意見だ。
取り入れるかどうかはおまえ次第だが…聞いてんのか?」

「…聞いてます」

本当に容赦がない

「…まぁ…お客様を待たせたくないのは分かるし、
その気持ちは間違いじゃない。
…ちなみに俺は泣かれるのが苦手だ。」

泣く…?誰が?

「…っそんなフォローありがた迷惑ですし、泣きませんから!
泣く人間は嫌いです!!」

啖呵をきってフロアに逃げ込んだ