『…日向、大丈夫か?』







『へ?あ、はい。大丈夫です。』








『辛かったら保健室行っていいぞ?』








『…じゃあ、すいません。行ってきます。』







『おう。』








先生の言葉に甘えて保健室で休むことにした。
あのまま教室にいてもモヤモヤして集中出来なかったし、ちょうどよかった。








『失礼します。』








『あら、日向さん。珍しいわね。どうしたの?』







『…ちょっと悩み相談ってとこです。』








保健室の美菜子先生は学校の先生の中でも仲良しで、よく悩み相談に乗ってもらってる。



最近はそんなことなかったんだけど。







『…過去のトラウマは、どうしたら消えますか?』







『トラウマ?んー、そうねぇ。どんなトラウマかにもよるわね。』







美菜子先生は、テキパキと仕事をしながら私の話をきちんと聞いてくれる。






『…ある人に、下の名前で呼んで欲しいと言われたんです。だけど…、あるトラウマが原因で今は京太しか呼べなくて。』





『…日向さんはどうしたいの?』








『…私は、分からないけど、その人を傷つけたくはないです。』







『…無理して呼ぶ必要もないけど、呼んで日向さんが苦しむなら、その人には真実を話すべきか考えどこね。』










美菜子先生の声は落ち着く。
確かに、下の名前で呼んで私が苦しめば、一ノ瀬くんは心配するだろう。

だけど、一ノ瀬くんのことを傷つけたくはない。







『…日向さん、恋は盲目、よ。』








『へ?』








『…いつかわかるわ。顔色も良くないみたいだからベッド使っていいわよ。』








私はベッドに寝転がると、目を閉じた。