『次英語だったかな…』





『七瀬、』








『京太。どしたの?』







『数学の教科書貸して欲しいんだけど、使う?』






『ううん、今から英語だから大丈夫だよ。』





『そっか。じゃあ貸してもらおうかな。…てか七瀬、さっきからこっち見てるやつ誰?』





『え?』







この人はもう一人の幼なじみの、泉京太。
クラスが違うから滅多に授業は一緒にならないんだけど頻繁に話す仲。



そして、こっちを見てる人。
一ノ瀬くん。






『一ノ瀬くん?』







『七瀬そいつ誰。』







『幼なじみの京太だよ。』







『…俺も名前呼びがいい。』







『七瀬は俺しか男は名前で呼ばないから無理だよ。じゃ、七瀬また返しに来るから。』





『あ、うん!またね!』








そこから二人きりになって沈黙。







『…なんでアイツしか名前で呼ばねーの?』







『…それは、なんとなく、かな。』








はぐらかした。
本当はちゃんとした理由があるんだけど、人に話すようなほどでもないから…。







『あ、ほらチャイムなるよ!急ご!』







私はバタバタと走ってその場から逃げた。
別に一ノ瀬くんのことが嫌いとか苦手とかじゃない。

だけど、どうしても名前呼びは…できない。