『なーなせ。』





『きゃっ』







『出たよ、郁の七瀬好き。』






『うっせ。篠崎は黙ってろ。俺の七瀬なの。』






『…一ノ瀬くん重い。』







『あ、わり!』







私は日向七瀬。
高校2年。


幼稚園からの幼なじみの篠崎麗。
そして、最近なぜか懐かれてる一ノ瀬郁くん。







『はーい、集合!』






『あ、先生呼んでる!七瀬行こ!』






『あ、うん!またね!一ノ瀬くん。』






私は一ノ瀬くんに手を振ってから、先生の方に走った。





『今日の体育はここで終わり。次の授業送れんなよ?』





『わかってるって。先生。』






『篠崎うるさい。じゃ終わり。』







教室に戻ると、もう既に何人かの女子は着替え終わっていた。






『ねー、七瀬。なんで郁にあんなに好かれてんの?』





『んー、わかんない。私なにかしたかな?』






『郁、ただでさえ心開く人少ないのに、七瀬に開くなんてね。』






私だって不思議なの。
なんで初めて同じクラスになった私なんかに心を開いてくれたのか。
懐いてくれたのか。


聞きたいけど、聞いちゃいけない気がするんだよね。







『七瀬ー、トイレ行ってくるねー。』






『あ、うん。』






私はロッカーに次の授業の教科書を取りに行った。