最後の賭け

「この間はすみませんでした。心配をかけて」

「いいえ」

 心配なんかしてないわよ、と答えたいところをグッと我慢して薬の説明をしていた真依子に、ユウジは着ていたTシャツをめくってこう言った。

「あれからあまりに肋骨が痛いんで整形外科に行ったら、こんなんされちゃいました」

 お腹までペロンと見せた彼の胸には白いリブバンド。真依子はぎょっとした。

「えっ、折れてたの、肋骨」

「そうなんです。いやー、びっくりしました」

「いや、でも、こんなところで、そんな裸、見せないで」

 Tシャツを捲り上げたままの彼に、他の客の目線が注がれているのに気づき、真依子は慌てたのだった。

 その後、彼の風邪が治り、花粉症が治り、姿が見えなくなったかと思った頃。

 真依子とユウジは偶然再会することになる。

 親友の沙織が、オススメのマッサージ店があるから一緒に行こう、としつこく言うので、しぶしぶついて行ったときだった。

 肩こりなんて、ローション塗って湿布でも貼っておけば、すぐ治るわよ。

 そんな風に言いながら店内に入ると、白衣を来たユウジが立っているのが目に飛び込んできた。