と、その時、鈍いバイブレーションの音が五回細かく響いた。

 カウンターの上でユウジのスマホが光っている。

「ごめん、メールかな」

 彼は、そっと立ち上がるとスマホを取りに行く。

 すぐに真依子の隣に戻って来て座ると、画面をタップし始めた。

「徹(とおる)からだった」

 その名前に、ぴくっと体が反応する。

 顔色まで変わったかもしれない。

 真依子は悟られないように、そっと深呼吸した。

「んー……」

「なんだって?」

 なるべく冷静に声を出してみる。

 それでも怖くて、スマホの画面を覗くことはできなかった。

「田舎から送られてきた野菜があるから、いらないかって。近くまで来てるみたい」

「そうなんだ」

「ちょっと行ってきてもいいかな。すぐ戻るから」

 そう来ると思った。

 真依子はため息が出そうになるのを、ぐっと我慢する。

 表情を強ばらせたのも、声が震えそうになるのも、耐えないといけなかった。

 今日は、あたしの誕生日を祝ってくれるんじゃなかったの。

 付き合って一年記念なんて言ってプレゼントまで用意してくれたのは、ユウジ、あなたじゃなかったの。

 そう言葉が、喉の奥の方で詰まっている。

 ふと視線を感じて、隣に座ったユウジを見つめ返した。

 そんな顔をされたら、「断って」なんて言えないじゃない。

 真依子はなるべく落ち着いて答えた。

「うん。待ってるから、大丈夫だよ」