ユウジと牛丼屋に入ったとき、その話をすると、彼はにこっとしながら言った。

「きっとその人は真依子さんが魅力的だから心配だったんじゃないかな」

「どういうこと?」

「牛丼屋は男の人が多いから。真依子さんが声かけられたりしない心配だったんだよ」

 そんなはずがあるわけがない。

 あいつはそういうところに一人で行かないような、可愛らしい女の子が好きだったんだよ。

 と反論した真依子に、ユウジは大真面目な顔で答えた。

「真依子さんは十分可愛いし、魅力的だよ」

 ずるいと思う。

 歯が浮くようなセリフも、この笑顔と口調のせいで、何も言い返せなくなってしまうのだから。

 真依子は財布を握りながら、窓に貼ってあるチラシをいくつかチェックした。キムチ入りが食べたいけれど、さすがに仕事中に食べるのはダメだろうか。

 あの新人だけなら遠慮なく食べるのに。

 午後にはパートのおばさま建ちも出勤してくる。

 そう思いながらお店に入ろうとした時だった。パンツのポケットに入っているスマホが、軽快にバイブした。