「‥‥‥‥」

ボクは、憮然とした顔で立っていた。

案の定、『ソイツ』は、人気のない場所に、ボクを連れてきた。

向かい合ったまま立つ、ボクと『ソイツ』は、一言も発しなかった。

その時、おもむろに『ソイツ』がサングラスを外した。

そして、ボクは、『ソイツ』の『素顔』を見て、息を呑んだ。

『ソイツ』の『類い稀な美しい容貌』。

金色の輝く髪に、金色に輝く瞳。

それだけで、ボクは、『ソイツ』が、『ただの人間』と『違う』と、『本能的』に察知した。

『ソイツ』は、『危ないヤツ』。

ボクは、ゴクリッと唾を呑み込んだ。

さすがのボクも、『ソイツ』には、『勝てない』。

そう判断した。

ゆっくりと『ソイツ』が近づいてくる。

そして、ボクは見たのだ。

『ソイツ』の口から『牙』が出ているのを‥‥‥。

『ソイツ』は『ヴァンパイア』だった。

ボクは、身動き一つ出来ずに、『ソイツ』が目の前に立つ。

そして、ボクを抱き寄せると、首筋に牙を立て、ボクの血を吸い始めた。

むせかえるような薔薇の香りに包まれて、ボクはクラクラとなり、次第に気を失っていった。

そして、ヴァンパイアは、恍惚な表情を浮かべ、ボクを少し驚いた様子で見ながら、こう言った。

「まさか、こやつが『男』だったとはな。」

それが、ボクと『ヴァンパイアであるルイ』との『運命の出逢い』だった。

だが、二人はまだ、それを知らずにいる。