話しの流れの感じでは、私は大学卒業と同時に、このおじさんの息子と結婚するらしい。


このタヌキみたいな顔のおじさんの子供は、やっぱりタヌキ顔なのかな?


頭の毛も薄い……。


なんとか生えてる横の髪で、必死に頭のてっぺんのハゲを隠してる。


そんなことをしたら、余計抜けてしまいそうなのに……。


息子もきっと禿げるだろう。


私はそんなことを考えながら、ふたりの会話をボーっと聞いていた。



「じゃあ、今度うちの息子を連れてきますよ」


「是非、お会いしたいですなぁ!」



って……。

パパは自分も会ったことのない男と、自分の娘を結婚させるつもりなのね……。


どうでもいいけど……。


でも、どうせ決まっている結婚なら、急がなくてもいい。


きっとタヌキ顔で将来禿げるだろう息子は、親に言われた通りに、好きでもない女と結婚するような男なんだから、つまんない男に決まってる。


だったら、なるべく遅い方がいいじゃない?



「それじゃあ、そろそろ失礼します」


「では又後日、ゴルフでもしながら……」


「そうですね!」



そう言ってタヌキ顔のおじさんは、上機嫌で帰っていった。



「ほら、お前が言ってた鞄、買ってきたぞ」



パパもすごく機嫌がいい。