「とりあえず上がれよ?」


哲平が言った。
お父さんは何も言わず、心配そうに見ている。

哲平の部屋に行くと、私も少し落ち着いた。

私の携帯は、鳴海から基地外のように電話が鳴る。


「出なくていいの?」

「うん…」


そう言うと、私は携帯の電源を切り、哲平の目を真っすぐに見て言った。


「私は…哲平が好き」

「何だよ、急に」

「ちゃんと聞いて?」

「…あぁ」


私は全部話した。
鳴海が婚約者だという事。
高校を卒業したら、鳴海と結婚する事。

そして誰より哲平が大切で、好きだと……。

もし哲平に振られても、私は今言った事を後悔はしない。


やっと哲平と向き合えたのだから……。


長い沈黙が続き、哲平が言った。


「俺、知ってたよ」

「……?」

「お前が婚約してる事…。陽子から聞いてた」

「……」

「お前は、俺と一緒に居たいの?」

「居たいよ」


私がそう言うと哲平は私を思いきり抱き締めた。


「じゃあ、二人で頑張って俺たちの事認めて貰おうぜ?」

「うん!」


親を説得する事は簡単じゃないと、私は知っていた。


でも

きっと

哲平となら……。


何でも出来る気がするんだ。