小さな恋のメロディ


そう言い残し、鳴海は出ていった。


コート……。


私は走って鳴海を追いかけ、コートを渡す。



「あぁ」



鳴海はコートを受け取ると、なにも言わずに帰っていった。



鳴海は私が文化祭に呼んだ理由を悟ってしまった……。
お互い好きじゃなくても、後味の悪さは消えない。


ふと気付くと、そこは私のクラスの前で、窓が全開になった教室には哲平がいた。



「追い掛けた方がいいんじゃね?」


「……大丈夫だよ。哲平こそ陽子さんは?」


「知らね。なんか怒って行っちゃった」


「ふ~ん……」


ポツリポツリと会話が続く。



「なんか久しぶりだな。あのさ……」


「私帰るから」


「そっか……バイバイ」


「バイバイ」



哲平はなにか言いたそうだったけど、私は気づかないふりをした。


その言葉を聞くのが怖かったから……。


それに今更、陽子と付き合ってるとか聞きたくなかった。




家に帰るとママが言った。



「東城さんから電話あったわよ」



鳴海のあの、後ろ姿が頭の中をよぎる。



「……なんて?」


「『今度、両家で集まって、食事でも行きませんか?』って」


「ふ~ん……」



そして夜になると、里沙から電話が鳴る。



「はい」


「もしもし?」


「うん。なにかあった?」


「『なにかあった?』じゃなくて……。一緒にいた人誰?」