「鳴海さん、次は何処に行く?」
「屋上で少し休まない?」
「うん!」
屋上に行く途中、里沙に会った。
里沙は複雑な顔をして、
「今日夜電話するね」
そう言ってそのまま行ってしまう。
屋上に着き少し奥に進むと、座れそうなところを見付け、私はチョコンと腰をかけた。
「少し寒いね」
そう言うと、鳴海は何も言わないで、自分が着ていたコートを脱いで私にかける。
コートから鳴海の甘い香水の匂いがした……。
「いいよ」
「いいから、着てな」
「……」
「今日、なんで誘ったの?」
「……婚約者だから」
『哲平への想いを、断ち切る為に貴方を利用しました。』
なんて言える訳がない……。
―バタンッ
入り口を見ると、哲平と陽子が驚いた顔をして、立ち止まってこっちを見ている……。
四人の空間に少しの沈黙が流れ、それを断ち切るように陽子が言った。
「哲平、お邪魔だからほかに行こう!」
その様子を見て鳴海は言う。
「ふ~ん、そういうことか……」
「?」
「なんとなく分かったよ。今日呼ばれた理由。俺、デートがあるから悪いけど帰るわ」



