「……」


「なにも言えないの?二股かけるくらいなら、哲平を返してよ!!」



私は今、とびっきりの嘘をつく。



「……いいよ。私、哲平のこと好きじゃない……。貴女にあげるわ」



そのとき、ドアが開く音が聞こえた。


ドアが開いた瞬間、初めて見るくらい冷たい目をした、哲平の姿があった…。



「なんだ……。やっぱりお前、そういう女だったんだな……」



そう言うと、哲平は何処かに行った。


私はボーっと、それを見ていた。



「なんで?哲平がいるの、知ってたんでしょ?」


「…貴女も見たんでしょ?私には婚約者がいるの」


「婚……約……者?」


「そう。結婚するのよ、高校卒業したら……」


「……好きなの?」


「……。哲平に言えなかったの。ずっと……。哲平を幸せにしてあげて」



そう言って、私は笑う。



「そんな顔で笑わないでよ!」



そう言うと、陽子は走って出ていった。


ポツリと……。

滴が落ちた。


頬に手を当てると、

涙がこぼれてることに気付いた。



私、泣いてたんだ?



トイレで顔を洗い、


私はもう泣かないと心に誓った。


私はこれから、強くならなきゃいけない。