「ねぇ、聞いた?又別れたんだってぇ~」


「マジで?」


「マジマジ。さっき、男子が盛り上がってたもん!今回も早かったね。二週間くらいじゃん?」


「これで何人目よ?」


「知らな~い」


「嫌な女……」


「いつか刺されるよ」


「言えてる~」


「しっ!聞こえるよ」




朝から学校の雑音がうるさい。

刺される?

それもいいかもね。

いっそのこと、誰か殺してくれたらいいのに……。



「ねぇ、ヴィトンの新作の鞄、可愛くない?」


「超可愛いよね!」


「私、バイト代貯めて買おうかな」



「え~、私も欲しぃ……。あっ、田上くんだ!」


「カッコいいね」


「こっちに来るよ?」


「……えっ?」



田上はポツリとひとりで席に座る、私の前に来て言った。



「綾香さん、別れたんでしょ?今度は俺と付き合ってよ」


「別に……いいけど」


「じゃあ、今日一緒に帰ろ?」


「いいよ」


「じゃ、放課後迎えに行くから」



田上はそう言って、教室を出ていく。



「もう次の男~?信じらんな~い!」



さっきからうるさいバカ女が、大声で言った。