中谷がいなくなったとき、俺は、帰ろうとしていた山下を呼び止めた。

中谷がいない間に付き合おうって思っていない。
ただ、ちゃんと、山下のことをちゃんと、諦めるために呼び止めた。

案の定、俺のことなんて、好きじゃなかった。
中谷がいなくても、心には、中谷がいるんだってわかった。

俺は、笑って立ち去ったが、苦しかった。
笑ってる場合じゃなかった。

かばんを取りに教室に戻った。
そこで、我慢していたものが、込み上げてきた。

誰もいない教室に、俺の泣き声だけが、響きわたった。