6.朝の秘密事




いつもと変わらない朝の日差しが窓から差し込む中、私は制服を着る。



いつもより気合を入れて。





『よし、そろそろ行こうかな。』




私は机の上に置いてある作りたてのお弁当を包んで、鞄にいれた。





髪よし。


服よし。





鏡の前で何度も身だしなみを整える。
少しのアホ毛でも許されない。


私がここまで身だしなみに気を使うのは、ある理由があった。




それは数日前、五木くんと一緒にお昼を食べた時のこと…………







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「姫野、お前って第2寮なのか?」




『ん?そうだけど。それがどうかしたの
?』



「俺と一緒じゃん。」




『え、うそっ!一度も寮で会ったことないから分かんなかった。何号室なの?』



「136号室。」



『……………………それ、私の隣の部屋なんだけど。』







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不意にした寮の話で、まさかのお隣さんだという事を知った………

その後の五木くんの提案で、何故か朝学校まで一緒に行くことになってしまい、こうやって朝から頑張って身支度をしている訳だ。




『こんな感じかなっ。』




身支度を済ませ、玄関でスリッパからローファーに履き替える。




『いってきまーすっ。』




部屋には私以外誰もいないけど、これを言うのが私の日課。




ガチャッ







「おはよ。」


『あ、五木くんおはよう。』




ドアを開けると、五木くんが待っててくれていた。

いつもの着崩してない制服に、軽くセットされた短めの黒髪。

そして今は見慣れた気だるさが漂う横顔がまた格好いい……





『五木くん今日は早いね?』


「そうか?あんまり変わらねぇけど。」




そんなたわいも無い話をしながら歩き出す。

寮から学校までは徒歩15分ほど、そんなに遠くもないから結構通学が楽で嬉しかったりする。





「姫野、あれは?」


『あ、忘れてた。ちょっと待ってね。』





鞄の中を探って、少し大きめのお弁当箱を取り出す。





『はい。どうぞ?』





私はそのお弁当を五木くんに渡した。





「ん。これ、コロッケ入ってる?」


『うん入ってるよ。昨日入れてって言われたからね。』



「よし。サンキュ。」







五木くんは子供みたいに嬉しそうに笑った。
この前一緒に登校する約束と一緒に、自分の分と、もう1つお弁当を作る事になった。


これも五木くんの提案で、



"俺いつもパンだけだし、お前も寝坊して弁当作り忘れたって言ってたろ?人の分作る事になれば寝坊するとこも無くなるしいいんじゃね?だから俺の分も弁当よろしくな。"




という事らしい。

ちなみに五木くんの大好物はコロッケ。
お弁当を作るようになってから2日に1回のペースで頼まれる。




普段より少し早く起きてお弁当作ったりとか、行く前に気にする身だしなみもプラスされて、少しやる事は増えて大変だけど、





「お前の弁当以外と美味いし助かってる。」





五木くんがくれるそんな言葉が嬉しくて、毎日頑張ってる。





それは五木くんに少し惹かれてるからかもしれないけど………






『うんっ、どういたしまして!』






私は笑顔でそう言った。





朝の必死な身支度も、

私を待ってくれる五木くんの横顔を格好いいと思うのも、

私が五木くんに惹かれつつあるのも、




それは、私だけの秘密。











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