思って、思って、思い続けて…

5.縮まる距離




少し暖かくなってきた風が私の頬を撫でる。

後ろにある木のおかげで木陰ができて眩しくはないけれど、明るい日の光が足元を照らしている。



ここは中庭の隅にある少し周りから隠れた所。

五木くんから手を引かれ、連れてこられたのだ……………



「ほら、これやるよ。」


ポン


『へ?あ………ありがとう、ございます。』


「なんで敬語なんだよ。」


そう言って五木くんは私にメロンパンをくれた。

これどこから出したんだろう……
さっきは何も持ってなかったはずなのに。


気になって隣を見ると五木くんがパンを食べている。しかも足の上にはメロンパンやらクリームパンやら、6個以上のパンがあった。



いや、だからそれどこから出したのさ。



思わず心の中でつぶやく………



「早く食べないと休み時間終わるぞ。」


『うそっ!食べますっ!』



そう五木くんから言われて時計を見れば時間は12時45分。
午後の授業は13時からだから、あと15分しかない。私は急いでメロンパンを口に含む。



あ、美味しい(泣)
空腹時のメロンパンがこんなに美味しいだなんて知らなかった(泣)


そんな事を思いながら食べていると、五木くんが私に聞いてきた。





「お前さ、入学式の時ぶつかってきた奴だろ。」


『えっ、うそ。覚えてたの?』


「まぁな。」



まさか五木くんが入学式の時の事を覚えているとは思っていなかったから、少し驚いて間の抜けた顔をしてしまった。



「ぷっ、お前変な顔。」


『なっ、変な顔で悪かったわねっ//////』



そういって、五木くんと笑いあう。
まさかこうやって五木くんと話す時が来るとは思わなかったけど、この時間が楽しくてずっと話せてたらなって思ってしまった。

だって何時もは取り巻きに囲まれてるし、何より話す機会もないしね。



「そういえば、お前名前は?」

すると突然五木くんは私の名前を聞いてきた。
少し驚いたけど、私は普通に答えた。



『あ、名前?姫野永久だよ。"えいきゅう"って書いて、永久。』




「へぇ、珍しいな。」


『そうかな?自分の名前だからそんなに思わないのかも知れないけど普通じゃない?』




メロンパンを口にしながら五木くんに言った。



「そうか?ま、いいか。俺は五木 夕、よろしくな。」


『うん!ヨロシクね、五木くん。』





知っていたけど、初めて聞いたフリをする。


もし知ってたと五木に言ったして、話したこともないのに知ってるのは引かれてしまう気がして言えなかったのあるけど…………


私の事を五木くんは知らなくて、

五木くんの事を私が知ってることが、

何となく嬉しかった。






「姫野お前何かニヤニヤしてるぞ。」




『気のせいじゃない?』




そういってまたメロンパンを口に含む。



不意に口元が緩んでしまう。







五木くんと初めて食べたお昼は、何時もより暖かくて、少し頬が熱かった……………








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