思って、思って、思い続けて…

9.寮までの時間






『まだかな………。』






今は夕方の6時。
私は学校の靴箱の前で五木くんを待っていた………








五木くんにお弁当を作るようになって、一緒に帰る機会も増えた。

まぁ、お弁当箱を返えすって理由で一緒に帰ってくれてるだけだけど。





『ふぅっ………………………。』







1人靴箱の前で佇む中、私はふと今朝の事を思い出す。




今日五木くんは、休み時間ごとに取り巻きの子達にずっと囲まれていた。

相変わらず無表情で一言も会話してなかったけど。

最近五木くんが取り巻きの子達と一緒にいるのを見ると、何故か胸のあたりがムカムカして、苦しくて、辛い……

でも、

前と比べて五木くんと一緒にいれる時間が増えたことを、素直に喜んでいた。





『でも、モテすぎなんだよな。』





私は誰もいない靴箱の前でボソッと言う。



あんなに女の子に囲まれる人を初めて見たし、
なにより極力学校では話さない様にしてるけど、一緒に学校に行ったりして仲良くなるにつれ、取り巻きの子達の私を見る視線が変わってしまった。





あのつき刺さる様な視線は辛い(泣)








「姫野。まったか?」





そんな事を考えていると、いつの間にか近くまできていた五木くんが話しかけてきた。




『ううんっ、全然まってないよ!それより、今日は少し遅かったけど何かあったの?』



私は五木くんにそう言う。


いつもは5時45分ぐらいには五木くんが靴箱で待っていてくれる。

でも、今日はその時間より15分遅くて、少し気になった私は五木くんに聞いてみた。




「ちょっと友達に捕まってた。ごめん。」


そう言って軽くテンションが低い五木くんは、ペコッと頭を下げた。



何時もクールな五木くんが、少しだけしゅん……と落ち込んでる。




絶対一緒に帰ろうと約束しているわけではないのに、遅くなった事に落ち込んでる五木くんに可愛いなと思ってしまう。





『そんなに気にしなくて大丈夫だよっ。でも、何で友達に捕まってたの?』



「あぁ、最近俺と一緒に帰ってるお前が見たいらしい。」



『うへぇっ、私っ!?』





突然の事に驚きすぎて変な声を出してしまった。


ただ気になって聞いてみただけだけど、まさか五木くんの友達が引き留めてた理由が私を見てみたいからとか………





どう反応したらいいか分からないんだけどな。




『ごめんね。よく理由は分からないけど、原因が私みたいだから謝っとく。』




「ん、大丈夫。まぁ、あいつらが勝手にしてるだけだから別に謝らなくても良かったし。」




『いいの、私が言いたかったんです。』




「はいはい。」



そう言って五木くんは前を向く。




チラッと五木くんの横顔を見ると、


その顔は取り巻きの子達といる時の無表情とは違い、少し柔らかくてどこか安心しているような顔。


そう思うのは気のせいかもしれない、
でも他の人といる時には見せない顔を、私の前ではしてくれていると思うと嬉しかった…………








『えへへへっ。』





「何だよ急に。」





『何でもないよっ。』





私は嬉しくて、緩みきった笑顔で笑いかけながら五木くんに言った。






「………俺さ、姫野のそうゆう所いいと思う。」





『ん?なにがー?』





私がずっとニヤニヤしてると、五木くんが急にそう言ってきた。




「いや……、姫野が俺に普通の笑顔で、普通に話しかけてくれるから、俺も姫野といる時は自然な自分で入れるんだと思って。」





そう話す五木くんの顔を見ると、優しい笑顔をしてた。



私は、今は黙って話を聞く時だと思って口を閉じる。





「学校に行くなり名前も知らない女子に囲まれてさ、あいつらって言ったら悪いかもしれねぇけど、人の事なんか御構い無しで話しかけてくるし。やっと1人になる時間が出来たかと思えば、クロちゃんと田辺から質問攻めだしな………。」





五木くんは、いつもと変わらない言い方で話しれくれる。





でも、その表情にはどこか疲れの色が出ていて…………



これは弱音と言うか、五木くんの愚痴なのかもしれないと思った。








「だから、姫野といると落ち着く。お前の笑顔見ると気が抜けるしなっ。」





子供みたいな笑顔で五木くんが言う。






『もうっ、気が抜けるってなによっ!』




「ははっ、まぁそう言うなってっ。」






私は明るく返した。


五木くんは、普段は冷静で強そうだけど、本当は落ち込みやすくて、弱いのかもしれない。


私はそう思った………


毎日あんなに一方的に話しかけられたら、私でも気が滅入ってしまいそうなのに、五木くんはずっと平然としてたんだ。




途中までは気にしてなかったのかもしれないけど、そりゃ疲れるよね。





『お疲れ様。』




私は五木くんに向けて、精一杯の笑顔でそう言った。





「ん。ありがとな。」






五木くんも、優しい笑顔で返してくれる。




取り巻きの子達を見たとき、私は胸が苦しかった。

まだ何で胸が苦しいのかは分からないけど、
今五木くんの疲れた様子を見て、当事者の五木くんの方がもっとキツイんじゃないかと改めて思う………




五木くんが私といて落ち着くなら、私はその場所を守らなきゃいけない。




五木くんは疲れてるとは口に出して言わないけど、私が分かってあげれる分はフォローしてあげたいなと思った。





私が色々考えてる場合じゃないね。






「姫野、もう暗いし寮まで少し急ぐぞ。」




『うんっ!』





いつの間にか少し先にいる五木くん。

私は駆け足で側まで行く。




日が沈んでく中、2人で他愛もない話をしならがら寮までの道を歩いた………











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