櫻木を送ってく帰り道。


あまりにも櫻木は謝ってくるので、
俺もこの辺だし別に大丈夫だと伝えたら少し安心した顔をしていた。


「…お前、前から歌好きなの?」

「はい!そりゃもう何にも代えがたいほど!」

真っ直ぐな目。


「……そうか」


聞くまでも無かったことをなぜ聞いたのだろう。こいつならそう答えるに決まってるのに。


調子が狂う……




しばらく歩くと小さなアパートが見えた。

「ここです!」

「うっし、それにしても俺の家から本当近いな」

「え、そうなんですか?」

「そーそー、俺ん家奥のマンション」

「あー!あそこの!」

しばらく2人でなんでも無い会話が続いた。
講義のこと、大地さんのこと、
……音楽のこと。


最後の別れ際で少し打ち解けられた気がした。



「じゃあ、海斗さん、わざわざありがとうございました。」
「いーよいーよ。また、飲み会あったら送ってってやるよ」
「…とってもありがたいので是非…」
「ははっ…おっけ俺に任しときなさい」



そう言っておやすみなさいと、声をかけた櫻木は部屋に入って行った。



「…家帰って作りますか…」


少し軽い足取りで俺は帰路についた。