どこからか 歌が聞こえた_____




「…………」



静かな風の音と

透き通るような声




温かくて優しくて


ずっと聴いていたい。



「海斗!」




聞き覚えのある声に腹を立て睨みつけた。



「んだよ、大地」
「お前も月子ちゃん聴いてるのかと思って」


月子…?ちゃん…?


「誰だそりゃ」



軽い沈黙があった。


「お前…今体育館で歌ってる人知らねぇの」
「知るか」


ハァ、とため息をついて俺を見る。



「櫻木月子だよ!いま構内で話題の!」

「へぇ」

「へぇ…って知らないのお前ぐらいだわ!!!あの綺麗な歌声聴いたことないとか……勿体無い…」

「…今初めて聴いた」




大地が言う通り、確かに綺麗だと思った。




でも誰かが思う、単純な綺麗さじゃなくて


俺には心がある気がした。


自由で、優雅で、美しくて、透き通っていて




訳なんてわからない。




何を思ってそう感じたのかもわからない。




でも________





彼女の歌がどこからか聞こえていた。




彼女の声は





海に浮かぶクラゲのようで






いつまでも俺の中に居座り続けた_______