カツカツ…



「え、あれ平野の幼馴染なん?」

「めっちゃ地味やん。無理やー」

本校舎に行くと、いつもヒソヒソと言われる。

「堂々と言えばええのに」

いつも隣で周りに聞こえるように言う沙良。

まぁ、ほんまのことやし…。

「お、来たな!」



ザワザワ…



無駄に職員の多い職員室。

「これ期末の範囲表。各クラスに配布しに行って?」

え。

か、各クラスって…

「進学以外の本校舎のクラスにも」

必然的に凌ちゃんに会わなあかんやん…泣

「ほら、さっさと終わらせるで!」

「うん…」



カツカツ…



「これ、生徒会とちゃうやろ。学級委員の仕事やから!!」

「まぁまぁ…」

言えてるけど。

生徒会って名ばかりで、ほんまは8割雑用…。

「あ、見て見て!外に向日葵咲いてる!」

「わっ。また綺麗に咲いっ…玲音!」



ガシャンッ



「わっ!!ちょ、誰か先生呼んでや!!」

「窓ガラス割れたで!!」

…ったー…

裏庭の向日葵を窓から見てたら、野球ボールが飛んできて…

「玲音!?︎血…!」

「え?あ…!」

頬がガラスで切れて、血が出てた。

「ほ、保健室行こ!?」

「あらまぁ、またハデに…」

保健室の先生がギョッとしてた。

どうやら足を捻ってしまったみたい。

「頬と手の平は消毒しといたから。足は…ご両親に迎え頼む?」

「あ!大丈夫です。自分で帰れるんで」

…って言って、結構ヒリヒリする。

「でも…」



ガラッ



「ん?…!?」

「やっぱお迎え…あら?」

「や、ほんまに大丈…」

沙良と先生の目線は、私の後ろに向いてた。

後ろを振り向くと…

何で…?

凌ちゃん…。

「…俺が連れて帰りますので」

何で、凌ちゃんが…?

「あ、あれやったん平野くんたち?」

「まぁ…」

…ありえそう。

や、でも2人には絶対なりたない。

「きょ、教室戻ります」

「え、玲音?」



ガラッ



左足を引きずりながら廊下を歩いた。

「……」

何で無言で後ろからついてくるん。

…あ!

「西畑くん!」

「…げっ!山下…」

人の顔見てげって何や。

「ちょっと肩貸してくれへんか?」

「は?ちょっ…バカがうつるから近寄らんといてや!」

なっ!?

たった2点差やろ!?

「…あ!そんな奴と関わりあるんなら尚更近寄らんといてや」

「あぁ?」

後ろから凌ちゃんの不機嫌な声が聞こえた。

「え、ちょっ…」

凌ちゃんは、西畑くんを睨んだ。

「山下早退って先生に言うとくから、ほなな!」

…や、やな奴…。

そう言って逃げるように校舎へ行ってしまった。

「……」



ヒョイッ



…!?

「...えっ!?や、やめっ!」

私を軽々とお姫様抱っこした。

「あばれると、階段から落とすで?」



ピタッ



私のラブレターを破った男が、私をおんぶしてる。

「……」

自分から最低なことしたのに、こんな風に助けてくれたりする。

…凌ちゃん。

やっぱ私、凌ちゃんが好き…。

彼女がおるって分かってても、やっぱ諦められへん。

幼稚園の時も、小学校の時も、中学校の時も、バレンタインも、節分も春休みも、夏休みも冬休みもクリスマスもお正月も、学校の登下校も行事も…

…全部私の思い出には、凌ちゃんがおったんやもん…。

凌ちゃん、覚えてる?

初めてピアス開けた時、凌ちゃんの部屋で、私が横で見てた。

「私も開ける」って言うたら、「お前は開けたらあかん」って言われて、なんか初めて置いてかれた気がした。

「…やだ…置いてかんといて…」

そう言ったら「分かった」って言ってくれたよね?

凌ちゃんなしじゃ、私もう無理だよ…?