「玲音…玲音?」



ビクッ



「ん、ん?何か言った?」

空くんとのデートやのにボーッとしてしまった。

「テスト明けやから疲れてるん?」

「う、ううん!大丈夫やで」

何してるん、私…。

空くんが3ヶ月記念やからってデートしてんねんから!

「…ここって…」

空くんに連れてきてもらった場所。

そこは、私が空くんと初めてデートに来た水族館やった。

「ん。行こか?

「う、ん…」

空くんに手を引かれて、私たちは中へ入った。



ザワザワ…



平日やのに混んでるんやなぁ…。

「あ、空くん!見て見て!ニモやー!」

「あっちにクラゲおったで?」

「ほんま!?」

いつもと同じ。

空くんが隣で笑ってて、それにつられて私も笑顔になって。

いつもと何も変わらへん。

「空く…っ」

でも、時々水槽を二人で見てると空くんの横顔は、とても悲しそうな顔をしていた。

「なぁ、玲音さ、」

「んー?」

フロートを飲みながら、イルカの水槽を見ていた時やった。

「初めてここ来た時、お前俺がフッた子らに怒ってくれたやん?」

…ありましたねそんなこと。

ちょっと大人気なかったやんなー。

「あれ嬉しかったで?」

「う、うん」

「俺のこと、ちゃんと見てくれてるんやなーって。なんか感動したわー!」

フロートをストローで混ぜた後、私の頭をポンポンと撫でた。

「そりゃー、あんなこと言われたら誰だって怒るって」

「ははっ。ありがとう。なぁ?これ、俺からのプレゼント」

「…へ?」

貝殻のネックレスを私に見せた。

「3ヶ月記念の」

「え?あ…っ」

何で、素直に受け取れんのやろ…?

「……」

「…あ、りが…っ」

受け取ろうとした時、空くんはネックレスの箱を閉まった。

「なぁ?聞かせて?玲音の頭の中には、今誰がおるん?俺やないんやろ?」

「……」

空くんは、私よりも早く私の気持ちに気付いていた。

「ははっ、笑。ほんまはな、凌よりも最低なん俺やねん」

「……」

「最初から玲音︎の気持ち知ってて付き合ってたんや」



ペチッ



空くんの頬を両手で包んだ。

「…最低なんかちゃうよ…」

「空くんがおらんかったら、私、もっともっと自分のこと嫌いになっとったかもしれへん」

凌ちゃんにフラれて、もう一度告白する勇気なんてなかった。

「付き合ってからも、空くんにいっぱいドキドキした。毎日毎日、会うんが楽しみやったよ…?」

「…ありがとう、玲音」

その分、私のこと好きでおってくれた。優しくて、不器用な空くんがほんまに好きやったで。

「…空くん、ごめんなさい」

頭を下げ、空くんに謝った。

その時の空くんは、涙を拭うように自分の頬をこすってたんだ。

「ん。幸せになりや?」

「…ありがとう」

初めての空くんとの恋が終わった。