「おはよー…」

「おはよー!」

眠そうな空くん。

かわええなー…。

「まだ眠いー…」

「ほら、パンケーキ食べれんくなるで?」

眠くて目をこする空くんのパーカーの袖を持ち、私は人気のパンケーキ屋さんに向かった。

いわゆる初デート。

「玲音、今日の格好かわええやん」

「えへへっ///ありがとー!あ、ズボンお揃いやん!」

「ん?…ほんまやー」



カシャッ



眠気が覚めたんか、空くんはお揃いのパンツをパシャリ。

「なんかカップルっぽいねー、これ」

「カップルやろ?」



カシャッ



そう言うて私の顔もパシャリ。

「あ、そっか…///」

手を繋いでパンケーキ屋さんに行った。



ザワザワ…



「んーおいひー!!」

「ははっ、笑。美味いな!」

普段は甘いものとか食べなさそうな空くん。

生クリームを口元に付けて、堪能中…笑。

めっちゃかわええ…



カシャッ



「…ふぇ?」

「…油断してたやろ?笑」

私が顔を上げた瞬間シャッター音が鳴った。

「ちょ、もー…」

笑ってる空くんの笑顔は、めっちゃキラキラしてた。

「この後、水族館行かへん??」

「うん!行く!」

「空くーん!写真撮ってー!」

「はいはい」



カシャッ



はしゃぐ私とそれを見て笑ってる空くん。

側から見たらカップルに見えてるかな?



ザワザワ…



「あ、見て!マンボウー」

「うわぁー。玲音そっくり、笑」

えっ?

私こんなノッペリ顔なん?

「えー?どこがー?」

「なんかのんびりなとこかな?」

「じゃあー、空くんはー…チンアナゴ、笑」

「いや細いんだけやん、笑」

はー?そっくりやーん、笑

「あれ?永瀬くん??」

「…!?…げっ!」

…ん?

お土産コーナーに行こうとしてた私たちの前に、女の子3人がおった。

…空くんの知り合い??

「名原…」

「…き、奇遇やね?」

髪を綺麗に巻いた背の低い女の子。

…え?

「そっち、もしかして彼女?」



ビクッ



その子の友達が言った。

「…そうやけど?」

…何この展開。

もしかしてあの子…空くんに…。

「この子フッた次の日によく彼女とデート出来るわ。」

「ありえへん」

やっぱり…

でもそれって空くんの自由じゃ…?

「や、やめてやそんな事言うん…」

「でも無神経ちゃうの?」

…はぁ?

空くんが、顔を歪めた。

「モテるからっていい気になってるんやろ?」

「なんなん?サイテーやし」



ブチッ



「…はぁ?だから何なん!?」

「ちょ、玲音︎…!?」

空くんに止められたけど、我慢出来ひんかった。

「部外者のくせにピーピーうっさいねん!!」

「なっ…!」

「空くんが優しいからって見返り求めんなよ!罵倒しても意味無いねん!」

「ひ、酷い…」

「あんたねぇー…っ」

な、何?

やる気!?

「あー…悪いけどさ。どうでもええんやって。他の子とか、興味無いねん」



グイッ



「…わっ!」

唐突に腕を引かれ、空くんの腕の中におさまる。

「俺は、こいつしか眼中にないんやから!」

「もぅ、行くぞ!」

空くんは、私の手を取り走った。



タッタッ…



「はぁ…はぁ…」

「…何勝手なこと言うてんねん」

水族館から出た先でもちろん空くんに怒られた。

「…だって悔しいやんか!」

自分の彼氏があんなこと言われて黙ってるなんて…

「…でもほんまのことやから」

「……」

「…最低な奴なんやで、俺は」

「そんなんな、人に悪く思われたないからって、いい奴ぶってるだけなんやで?」



ペチッ



空くんの頬を両手で包んだ。

「…そんなん、皆そうやで?」

好きな人に好かれたい、だから自分とちゃう自分になりきる。

そんなん皆一緒。

「大体、空くんいい人ちゃうし!」

「は?」

「平気で勝手に写メるし、私の参考書に落書きして返すし。全然いい人ちゃうやんか、笑」

あ、あと好き嫌いも結構多いし。

朝はなかなか起きひんし。

「…ハハ、笑。やっぱ変やな、玲音って」

「え?どの辺が…っ」

空くんの影が私のと重なった。

「…っっ!?///」

「…唇、グロス塗りすぎやで?笑」

「あ、アホ!」

思わず唇を手で拭った。

ふ、不意打ちすぎる…///

「か、帰ろっか。玲音」

「……」

何故か、帰るのが嫌になった。

前を歩き始める空くんを引き止める。

「…空くん!」

「ん?」



ギュッ



空くんの裾をつかむ。

「…まだ、一緒におりたい」

「お、おぅ。…ほな一緒におる?」

「…うん…」

空くんは私の手を握り、自分の家まで走った。



タッタッ…



何でこんなに楽しいんやろ。

若さの特権。

青春の特権。

こんなにはしゃいで汗かいて好きな人と走ってるのは、私が本当の恋愛を知らんから。