ー平野 凌sideー




「…はぁ…」

「凌ちゃん?なんか上の空やね?」

「…そ?」

「何年彼女やってる思ってんねん」

彼女。

「いっぺん別れたし」

「でも今付き合ってるやん!」

…彼女。

ありさは空と同じ高校に通う俺の彼女。

「あ、こないだありがとな。クッキーめっちゃ美味かったわー」

「全部食べてくれたんや!珍しー」

「いつも食べてるやんけー!」

「あははっ」

大切にせなあかんのは、もちろん、ありさ。

なのに、なんでこんなにイライラするんだよ?

「なあ、今度映画あるんやてー」

「映画?なんの?」

「恋愛もの。めっちゃ見たいんやて!」

「ふーん…ええけど」

「ほんま!?ほな、来週の月曜の放課後!」

…ありさ、気合入ってるんか?張り切りすぎやで!

「凌ちゃん絶対やで?」

「おう。あ、もう遅いから送るわ」

「えー?今日泊まりたい!」

「ええよ。ありさ着替えは?」

「凌ちゃんの着るー」

「はいはい」

美人やのに気取らん。

結構天然で自由人。

ありさの良くも悪くもあるとこ。

「な、この子誰ー?」

俺の壁に飾ってある写真を指差した。

「…あー、幼馴染…」

中3の時の修学旅行の時の。

空とアイツと沙良と4人で撮ったやつ。

「かわええ子やなぁ…」

「…それはええから、風呂入ってきたら?」

「わーなんか凌ちゃん、なんかエロい、笑」

「うっさいわ!はよ行けっ」



バタンッ



「……」

「…外そっ…」



ピッ



写真を外し、引き出しにしまった。

…何でアイツ、俺のこと好きでもないのにあんなこと言うん?

アイツが好きなんは…。

「…両思いやん、あいつら」

アホくさ。

はよ空も告ればええのに。

…告れや、はよ…。

そしたら…。