「…え?あ、ありがとう」

目が覚めた時、空くんがおった。

「あと、これ」

分厚い茶封筒を私に渡した。

「俺んとこの数Iの問題集」

「…私解けるかな?」

「余裕やろ?分からんとこ教えたるから」

…優男やー。

「…凌ちゃん、帰った?」

「あーうん。俺が来た時にはおらんかったで?」

「…そっか」

凌ちゃん帰ったんや…

「…あ、なぁ?玲音︎来週月曜、暇?」

「…学校やね」

「分かっとるわ!放課後ってこと!」

放課後?…予定何も無かったね。

「暇だよー?」

「映画のチケット貰ったんや!」

そう言ってチケットを見せてくれた。

「映画?」

「クラスの奴から2枚貰ったんや!」

うわぁー。

沙良が見たがってた恋愛もののやつ。

「クラスの女子誘えばええのにー」

「んーあー…お前好きちゃう?」

「ううん、好きだよ」

空くんの優しさに、少し甘えてしまった。

「楽しみやな!」

「え?永瀬と映画?」

「うん、月曜の放課後」

「ほー…まあアイツなら大丈夫か」

お昼ご飯を食堂で食べながら話した。

にしても、空くんってほんま彼女おらんの?

面倒とか言いながらもほんまは…ゲイ…とか?

「なあ、昨日見た?」

「見た!あの子やろ?」

「平野くんがおんぶしててー…」

…もう噂になってるんか。

早いなほんま噂って。

「女って、怖いわーいつか刺されそうやなー!」

「沙良も女やん!私からしたら、一番沙良が怖いわー!」

「えー?なんでよー!」

沙良さん、こう見えて元ヤン。

あぁ恐ろしい。

「なぁ?」

「んー?」

「あははっ、米粒ついてんで?」

口元の米粒を取ってくれた。

綺麗な顔やなぁ。

「永瀬って玲音のこと好きやって」



ゴフッ



飲んでた水を吹きかけた。

「そ、空くん??」

…が、私のこと?

いやいや。

無いやろー!

「だってさ、好きちゃうのに男が女を映画に誘うなんてありえんで?」

え?

そうなん?

「でもええんちゃう?恋は恋で忘れるんやて」

「…忘れる気無いんやけどな」

凌ちゃんと、空くんは全然ちゃうし。



ワーワー…



なんか騒がしくなっ…!?



ガタッ!!



思わず立ち上がった。

な、何で?

女子たちの歓声と視線の先には、何故か空くんがおった。

「え?永瀬?」

「あ、おったー!」

な、何で空くんが、こんなとこに…?

自分んとこの制服着てここにおるん?

「あの茶封筒、今持っとる?」

「へ?あ、教室…」

事情をゆっくり聞くと、あの茶封筒に空くんの高校のノートが入ってたようで。

教室まで取りに行って、空くんに渡す。

「はいっ!」

「サンキュ!あ、月曜迎えに来るからね!」

「あ、うん。分かったー!」



タッタッ…



…台風みたいな男やなー。

「山下っ」

げっ!

西畑くん…

「…あのさ、」

「…ん?」

「今度英語ちょっと教えてくれへん?」

へ?

あんな殺菌とか言われてたのに…←大袈裟w

何故また突然…?

でも、そういうギャップも必要かな?

「ええよ!」

「ほんま!?︎ありがとな!」

…あれ。

笑ったらかわええやん、西畑くん。

「…あ、ほなな?」



スタスタ…



「…おい」

ビクッ

…この声…

「…な、に?」

目線を合わせんと、凌ちゃんの方を向いた。

「大袈裟なんやって」



ビッ!!



「いっ!!!っ…」

何すんの!?痛いやんかー!

頬の絆創膏を思いっきり剥がされた。

「お前、空と会うんやろ?」

「…まぁ…」

「当てつけか?」

え…?

凌ちゃんの顔を見ると、あの時と同じ顔をしてた。

「俺にあんなことされたからって、空と付き合うん?」

は…?

そんなんじゃ…

「……」

…やけど、悪いん全部私やし…。

「最低やな、クソビッチ」



…パンッ!!



凌ちゃんの頬を叩いた。

「…最低なんどっちやねん!?」

「…勝手なんも、最低なんも…全部凌ちゃんやんっ!!」

凌ちゃんの頬を叩き、手がジンジンした。

「お前…っ」

「空くんと何しようが、彼女おる凌ちゃんに関係ないやろ!?」



タッタッ…



泣いたのは私のほうで、涙を堪えて教室に戻った。