「おはよう」
いろいろ考えているうちに学校に到着し、音楽室にも着いた
集まってきている同期の部員たちに声をかける
「おはよ」
「おはよう、日和」
「おう」
返ってくる言葉はいつも通り
でもその言葉はどこか不安げな様子もする
皆から少し離れ、荷物をおろしていると
後ろに気配がした
「…がんばろうね。」
「うん。がんばろう、杞歩。」
静かに、でもしっかりとした声で杞歩は言う
「出られない人の分の想いまで私たちは背負わなくちゃ。」
その瞳にはどこか決心したような力強さが見える
…そうか。コンクールに出る私たちが落ち込んでいる場合じゃないんだ
私たちには出られない仲間の分まで真剣に
曲と、
バンドと、
自分自身と、
音と、向き合わなくてはいけない
「うん。杞歩、ありがとう。」
気づかせてくれてありがとう
そんな想いを込めて、ふわっと笑ってみせた
