「久しぶりだね。晶。」




個室の扉を右に開く


真っ白な病室には規則正しい機械音が響いていた




ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……
……ピッ……ピッ……ピッ……ピッ





ゆっくりと綺麗に整えられたベッドの上の彼の元へ足を進める



久しぶりみた彼の顔は痩せこけていてまるで病人のようだ





「ううん、今は病人なんだったね」





2ヶ月もの間昏睡状態であればこんなふうになるのも仕方ないのかな




そばの椅子に腰をかけそんな顔を上から眺める


艶のある黒い髪、長い睫毛、スっと通った鼻筋……………


相変わらず整った顔をしているその姿に少しの嫉妬心が胸中に広がる





「痩せても私より綺麗とか……妬いちゃうなぁ」





体のあちらこちらに繋がる管からは透明な液体が流れている





いくら声をかけても反応しない彼に胸が縄で縛られたように痛む






「……ねぇ、晶。大事な話しよっか」





離れてしまわないように細い手に強く握る




次の言葉が私の口から出るまでどれほど時間がかかっただろう


君が起きていたら"はやく。"と急かしていたに違いない




「………私ね、晶のこともう待てないや。」





「でも、嫌いになったわけじゃないよ。」





「自分のこと犠牲にしてまで私のこと守ってくれたんだもん。」





「余計好きになっちゃった」







次から次へと言葉が流れ出るのに同調して目から涙が落ちていく


そのうちしっかりと呼吸ができなくなって嗚咽混じりの言葉になった






「私……っ…わがまま………だっ……ね。ごめん。ずっと……まって…あっ……あげれなくて…………ごめん。」






最後に会いに来たのは失敗だったかもしれない


こんなに離れたくなくなるなんて思わなかった









徐々に重くなる体は柔らかい布団の上に落ちる


あまりの息苦しさに彼の手を今までとは比べ物にならないほど握った












朦朧としてきた意識の中君に届ける"最後の言葉"





「………さよ…な……ら。…あ…い……し」







ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……
ピーーーーーーーーーーッ










真っ白な病室に2つの機械音が鳴り響く。