総長と女番長 ~ときどきお兄ちゃん~

相手は私をめがけて襲いかかってきた。

歯を食い縛る…。
鈍い音がした。噛まされたー

一瞬よろけたけど、なんとか体制を立て直し向かっていった。

相手は次々に気を失い、伸びている。

バカめ。私を誰だと思ってやがる…。とどめだと言わんばかりに、ボスを沈めてやった。

ふん、ざまぁ見ろ!


相手は退散していった。

私は教室に戻った。そして、しれっと、授業を受けている。


ーまた派手にやってしまったー

今更後悔しても遅いのだけど…。


心配そうに結城が私のところに来て声をかけた。

ー圧倒されたーと。


私は何とか笑顔を作って結城を見た。

大丈夫だよって…。

結城はそうかと笑うだけで何も言わなかった。


放課後になって、私はまだ教室にいる。

部活はやってないし、何となくやることもなく、帰るわけでもない。

そして、なぜか教室にいる。

結城も同じみたいだ。

二人きりの教室…。たいした会話もなく、窓の外を見ている…

会長が来た。

慌てて立ち上がった私に笑いかけると、

全員蹴散らしたみたいだな、と言われてしまった。


恥ずかしい…顔が真っ赤になった。


特攻服の採寸するから…。代々うちの行事で作られる特攻服は生徒会のハンドメードなんだよ!!だから…個性が出る、

と言っていた。

なるほど…。

キミなら白が似合うだろうな…と会長は言いながら私の頭から足先まで何度も目を走らせた。

うっ、ハズイよ!!てか、見すぎ…と私は少しうつむいたら、

今、採寸してんだからした向かないでもらえない?

と言われてしまった。

マジなの?計るんじゃなくて…目視でサイズ決めるの!?

すごいな…。

そう思うと自然と背筋は伸びた。


会長、俺も参加したいんですけど…。

口出すように結城は言った。

一般3枠と生徒会推薦2枠からなる女装男子のメンバーなので、参加出来ないことはない。

けど、希望者は意外にも多かったはず…。

厳しいのでは?

そう思った矢先、会長は結城を見て、

その頭で女装する気?ヤバイマジウケる

と言いながら笑い始めた。

会長私も同じことを思いましたよ…と心で呟いた。


ウィッグかぶりますよ!!ちゃんと…。

なぜか必死になっていってる結城。

会長はよっぽどツボだったのか…まだ少し笑いのひかない顔で、

わかった。面白い…良いだろう。俺推薦の特別枠で出してやる。

と言った。結城はガッツポーズした。

いいんですか?と私が会長を見れば、

まぁ楽しみにしとこうよ、と笑った。

なるほど…会長ってこーゆう人なんだ…。

ちょっと怖いかも…とか思ってたけど…そうでもないんだ。

なんか少し安心した。


私の方を向くと、普段から制服、ズボンだし、男物の特攻服でも似合うだろ。まぁ楽しみにしといてよと言い残して、帰っていった。

ポカーン。言葉がでない…

よっし、じゃあ俺、気合い入れて女装しなくちゃ!!と結城が言っている。

ホントにバカだ。コイツ…

本気で女装したいのか?何が楽しいんだろう…。

結城、本気で女装するの?ー


当たり前だ。やるからにはしっかりやるさ。人気投票も上位取りたいし…

もちろん、1位目指すよ。そして、文化祭でのお前とのデートも。


どうやら本気らしい。

私はわかったよと言ってやった。

コイツ、ホントに総長なのかよ…これで。

って普段はどんな総長してんだ!?

謎だ。確か1回集会参加さしてもらったことあったな。

けど、そんときも総長らしい感じのオーラ出てなかったような…。

まあけど、総長なんだよな…不思議だ。

もしかして、名だけの肩書き総長だったりして…

結城ならあり得るかも…。


私はそんなことを考えながらボーッと結城を見ていた。

なぁ、久しぶりに参加するか?集会…

と結城がいったので私は頷いて勢いよく立ち上がると、椅子が倒れてしまった。

結城は笑いながら椅子を戻してくれた。

顔が近い…。思わずマジマジと見てしまった。

結構キレイな顔してんだよなー

私と結城は教室を出て、結城の族の集会に参加した。

集会を終えて、暴れようとしたとき、タイミング悪くか、ライバルらしい暴走族に出くわした。

私はキョドった。どうすればいいんだろう…。

私関係ないしな~巻き込まれたくないな~とか思ってた矢先、

向こうの総長らしき人が私を人質にとり、何か言い出した。

キレイなねぇちゃんだね~。この子誰よ?と。

みんなが焦っている中冷静にそして、ドスの効いた低音で、

その人、俺の女だよと結城は言った。そして、続けた。

エンスパイヤと蓬莱の奴等を一人で蹴散らしたうちの学校の番長…って。

結城のその言葉に少しどきどきした。

抵抗するべきか考えたが、抵抗しないことにした。

結城の実力を見たかったから。

ゴメンね?結城…ちゃんと守ってよ…と心の中で呟いた。