「理莉」

『…?』

「もーちょい、こっち」

『…!//』



和さんが私の腕を引き寄せる。
背中に回される、和さんの腕。
体が密着して、朝から心臓に悪い。

和さんの身体は、見た目と違って
案外男臭いんだから。
ドクンドクンと、鼓動が
和さんにまで響いてやしないだろうか、なんていらない心配。


精一杯顔を上げてみると、
鼻と鼻がくっ付きそうな距離で。
もう、だめ。
なんだか朝から、お風呂でもないのに
逆上せちゃいそう。



『…和、さんっ』

「あー、さんいらないって
言ったのに、昨日」



また呼んでるじゃん、なんて
口を尖らせる和さんが可愛すぎる。



『は、恥ずかしいもん…!』

「恥ずかしいもなんも。
昨日したことの方が
恥ずかしいでしょーが」



ぼうっと顔が熱くなるのが、
自分でも分かった。



「あ、思い出してるデショ。顔赤いよ」

『〜〜〜もうやだぁ//』

「うふふ。」



俯くと、擽ったい笑い声が聞こえた。
和さんが何度か私の髪を丁寧に梳く。



「…俺、幸せ。」



突然そんなことを言い出すから、
どうしたんだろうと顔を上げた。
ん?どした?と和さんは
私を見つめる。



『幸せ?』

「そ。だって、朝から
好きな人と一緒なんだもん」



ほらまた。確信犯だよ和さん。
ずるいよ。
好きな人だなんて。
そんなこと、朝から平気な顔して
言わないでほしい。

心臓、もたないよ。




『……』

「黙ってないで反応しろや…」



瞬きをして見つめ直した
和さんの耳は、
いつの間にか真っ赤になっていた。

そんなこと言われたって、
どう反応したら良いの?
逆に私がどう反応すれば良いの?
もう分かんない。



『…和、さん』

「なに…」



私からそっと、おはようのキス。
自分からするのは初めてだ。

和さんが、目を見開いて
私を見ている。



『…これでいい?』

「…いんじゃない?」



和さんが、嬉しそうに
目尻に皺を寄せて笑う。

でもね、と和也さんは言う。



「キスは、こっちが良いかな」



重ねられたキスは、
私がしたものと違って深い。
昨日何度も交わしたはずのそれは、
朝からすると刺激的。



『ふッ…』

「ふふ」



何度か唇が合わさった後。

和さんが、今日
どうしようかなと言った。



『私…授業…』

「んじゃー、それサボろっか。」

『え、』

「俺授業ないもん。暇だもん」


だからお願い、ね?なんて。



そんな首傾げて言われたら、
嫌って言えないじゃない。



「はい けってーい。
お休みけってーい。」



ああ友達に、ノートお願いしなくちゃ。
体調悪いの、なんて嘘付かなくちゃ。




その代わり。


比べものにならないぐらい
幸せな時間を

和さんと過ごせたら良いな。