「……話したくなければ、いいですよ?」
どうせ聞いたところで完全に理解できる話でもなさそうだし、私には何もできなさそうというか、関係なさそうなので、そう言ってみる。
でも恭兄さまは、迷いを振り切るように首を振って、私の右手を取り、ご自分の両手で包みこんだ。
「違うんだ。中途半端に話して誤解されたくなかっただけだから。由未ちゃんに隠さなきゃいけないことは何もないよ。僕と、義人くんを信じてほしい。」
……手。
わかったから、手……。
茶室の前の廊下が暗くてよかった。
私、絶対、顔、赤い……。
「由未、素麺のつゆまで作るようになったんや。えらいな〜。」
去年までセルジュん家で、希釈するタイプの市販品を使ってたことを知ってる兄がそう誉めてくれる。
「うん。でも、やってみたら簡単やったよ。市販品買うほうがはるかに安いけど。」
もし恭兄さまが、化学調味料にここまで敏感じゃなかったら、たぶん自分で作ろうなんて思いもしなかったやろうな。
恭兄さまは、いつも通り、静かに美しく召し上がっていた。
……薬味を色々準備すると全て試さはるけど、お気に入りなのは青紫蘇とみょうが。
なので、必ず多めに刻むようになった。
兄は、山椒の葉が気に入ったようだ。
「それで……夕べ、恭兄さまは、父と何か大切なお話でもしはったんですか?」
恭兄さまがお箸を置かれたのを待って、私は尋ねた。
「大切というか……えーと、どこから話せばいいのかな。……由未ちゃんのお父さんの会社に、ちょっと心配な点があったから、改善案を提出してきたんだけどね。」
恭兄さまの言葉に、兄が笑う。
「
えらい綺麗に言わはりましたね。さすが。」
「……からかわないでよ、義人くん。」
「心配な点って、反社会的勢力との関係ですか?」
私の言葉に、恭兄さまは眉をひそめて、兄を見た。
「だから、もう由未にゆーてます、って。もうちょっと具体的に言うて大丈夫ですよ。」
兄が恭兄さまを促す。
「……そう。うん、そうだね。僕とか義人くんとか、素人が簡単に侵入できるレベルのセキュリティのところに、そういうやばい関連会社を特定できるデータを置くのはまずいと思うんだよね。」
恭兄さまはそんな風におっしゃたけど、たぶん恭兄さまも兄も、少なくとも「素人」のスキルじゃないような気がする。
「僕、在学中に公認会計士の試験に受かってるし、簿記も1級だから、そのへんを信用してもらって、やばい会社を全部僕に任せてもらうことにしてきたんだ。僕を役員にしてくださってるクリーンな会社は、ちょうどいい機会だから、義人くんに譲って。将来的にもそのほうがいいと思って。」
え?意味がちょっとわからない。
どうせ聞いたところで完全に理解できる話でもなさそうだし、私には何もできなさそうというか、関係なさそうなので、そう言ってみる。
でも恭兄さまは、迷いを振り切るように首を振って、私の右手を取り、ご自分の両手で包みこんだ。
「違うんだ。中途半端に話して誤解されたくなかっただけだから。由未ちゃんに隠さなきゃいけないことは何もないよ。僕と、義人くんを信じてほしい。」
……手。
わかったから、手……。
茶室の前の廊下が暗くてよかった。
私、絶対、顔、赤い……。
「由未、素麺のつゆまで作るようになったんや。えらいな〜。」
去年までセルジュん家で、希釈するタイプの市販品を使ってたことを知ってる兄がそう誉めてくれる。
「うん。でも、やってみたら簡単やったよ。市販品買うほうがはるかに安いけど。」
もし恭兄さまが、化学調味料にここまで敏感じゃなかったら、たぶん自分で作ろうなんて思いもしなかったやろうな。
恭兄さまは、いつも通り、静かに美しく召し上がっていた。
……薬味を色々準備すると全て試さはるけど、お気に入りなのは青紫蘇とみょうが。
なので、必ず多めに刻むようになった。
兄は、山椒の葉が気に入ったようだ。
「それで……夕べ、恭兄さまは、父と何か大切なお話でもしはったんですか?」
恭兄さまがお箸を置かれたのを待って、私は尋ねた。
「大切というか……えーと、どこから話せばいいのかな。……由未ちゃんのお父さんの会社に、ちょっと心配な点があったから、改善案を提出してきたんだけどね。」
恭兄さまの言葉に、兄が笑う。
「
えらい綺麗に言わはりましたね。さすが。」
「……からかわないでよ、義人くん。」
「心配な点って、反社会的勢力との関係ですか?」
私の言葉に、恭兄さまは眉をひそめて、兄を見た。
「だから、もう由未にゆーてます、って。もうちょっと具体的に言うて大丈夫ですよ。」
兄が恭兄さまを促す。
「……そう。うん、そうだね。僕とか義人くんとか、素人が簡単に侵入できるレベルのセキュリティのところに、そういうやばい関連会社を特定できるデータを置くのはまずいと思うんだよね。」
恭兄さまはそんな風におっしゃたけど、たぶん恭兄さまも兄も、少なくとも「素人」のスキルじゃないような気がする。
「僕、在学中に公認会計士の試験に受かってるし、簿記も1級だから、そのへんを信用してもらって、やばい会社を全部僕に任せてもらうことにしてきたんだ。僕を役員にしてくださってるクリーンな会社は、ちょうどいい機会だから、義人くんに譲って。将来的にもそのほうがいいと思って。」
え?意味がちょっとわからない。



